DREAM MAGAZINE

曽我部恵一 フリートーク・ジャム’05 SUMMER #1

interviewed by natsuo kitazawa
photo by tadashi matsugi

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[曽我部恵一 Bサイド]
―― 『sketch of shimokitazawa』、すごく良かった。

曽我部 いいでしょー。

―― 雰囲気が最高。全部良い曲だし、アヴァンギャルドとポップの混ざり方が絶妙。「七月の宇宙遊泳」の、コントラバスのブオーって鳴る感じ? あれって、フリー・ジャズのアート・アンサンブル・オブ・シカゴみたいだね。

曽我部 ホントだね。そうかもね。言われて思ったけど、アート・アンサンブル・オブ・シカゴが参加したブリジット・フォンテーヌの『ラジオのように Comme A La Radio』(1970年)に入っててもおかしくないよね。

―― ほんと、そういう感じ。組曲っぽい。ベースの使い方が硬質でいい。

曽我部 マイク一本立てて、ベースの伊賀くんとふたりで並んでセッション。若干ブラジルのサイケデリックの影響もある。“公園でひとりUFOがくるのを待ってる”っていう詞はカエターノ・ヴェローゾからの引用だよ。

―― 小沢健二くんのさ、一枚だけアコースティックなミニ・アルバムあるじゃない。

曽我部 『球体の奏でる音楽』。

―― あれ、ひとつひとつの楽曲はいいのに、アルバムとしてはちょっと中途半端なんだよな。こういうふうに作れたら、もっと良かったかもね。曲数増やしてさ。

曽我部 実は自分でこのアルバム、いちばん気に入ってるんですよ。

―― これ最高だよ。どんなジャケットにするのかな、とかいろいろ想像しながら今日ここに来て、さっき見本を見せてもらったんだけど、すごく素敵だね。歌詞カードの刷り色は黒になるらしいけど、青でもいいよね。なんか下北って青のイメージがある。

曽我部 最後の曲「ベティ」は、映画『ベティ・ブルー(Betty Blue)』(1992年 監督、製作/ジャン=ジャック・ベネックス 出演/ベアトリス・ダル、ジャン=ユーグ・オングラード)にインスパイアされて作った曲。『汚れた血』(1986年 監督/レオス・カラックス 出演/ドニ・ラヴァン、ジュリエット・ビノシュ)と並んでいちばん好きなフランスの映画。

―― この曲も良かったなー。

曽我部 これはね、だから『ラブレター』のミックス・ダウンをずっとやっているわきで、スタジオにピアノがあったから、そこで曲作って、録っちゃったの。真夜中に。

―― 「OH!ブルーバード」って曲もいいよね。

曽我部 これ、いいよね。ここ(ROSE オフィス)で録ったんですよ。気管支炎で声がぜんぜん出ない時期で、だからゲストボーカルもいいかなと思って溝田志穂さんに来てもらった。そのとき頭にあったのはスタイルカウンシルのLPにおけるトレイシー ・ソーンの客演。自分のリードボーカルじゃなくてもいいじゃない、って。

―― 『カフェ・ブリュ』(1984年)の「ザ・パリ・マッチ」だったんだ! なんか、楽曲的にはこっちの方が粒が揃ってない? そんなことないか(笑)。ロックンロールも好きだけど、〈クレプスキュール〉みたいにヨーロッパのインディー・レーベルが持ってるアーティな雰囲気も好きでさ。曽我部くんもそういうトコあるでしょう。サティやラヴェルが好きだったり、ジョン・ケージ好きだったり。

曽我部 だから、これ2枚同時っていうか、『ラブレター』と一緒に出したかった。

―― 両方あってこそ曽我部くんなんだよね。2枚組でもいいくらいな感じで・・・・・・。でも、それぞれこの形で在るのがいいのかな、やっぱり。

曽我部 アルバムってもののあり方が2枚とも微妙に違うわけ。曲とかってことよりも。あと、お互いの曲が混在するのは、ないかなと思う。「ジュークボックス・ブルース」をガンガン歌った後に、「OH!ブルーバード」やり始めても、ね(笑)。でも、どっちも自分のなかにあるものだからさ。

――  曽我部くんの両面、ロックンローラーな面とアーティスティックな面を併せ持つ曽我部くんならではの個性が、よく出てる。以前の曲で言えば「雪」とか「月」が後者で。

曽我部 Bサイドね。「あの花と太陽と」とか。

―― そうそうそう! 曽我部くんのBサイド、すごく好きだからさ。

曽我部 オレも好きなんだよね。

―― それがこの『sketch of shimokitazawa』というアルバムでは、トータルに形になってる。

曽我部 このアルバムは、ホントに昔っから持ってた曲がほとんどかもね。「かげろう」っていう曲も、もう何年も前に作っていろんなヴァージョンを遊びで家で録ったりはしてたんだけど、一回も発表してなくて。「OH!ブルーバード」とかもそうだし。

―― 時期的には、ファーストとかセカンドの頃の曲?

曽我部 うん、うん。 

―― あの頃、たくさん録って、でも没にしたって言ってたもんね。

曽我部 没というか、仕舞っておいたという感じ。もちろんその頃のレコーディングではないんだけど。

―― でも全体的にしっくりと統一感がある。これこそトータル・アルバムになっているよね。全てが収まるべきところに収まってるというか。確かにB面なんだけど、これがないと曽我部恵一じゃないっていう、コアなところが入ってる。
これは末永く聴ける愛聴盤になるね。特にサニーデイからのファンは絶対気に入るはず。俺、「NOW」のマキシシングルのカップリング3曲(「あの花と太陽と」「何処へ」「1997年の夏」)とかすごく好きだよ。

曽我部 そうだね、あの世界観だね。あれはまだ若いけど、あれがさらに一巡した感じで。「jellies」って曲があるでしょ、これがね、自分ではマイルストーンなの、作詞家としての。「LOVE-SICK」で歌った、“夜の仕事、ゼンゼン手につかない こんなことどうでもいいと思ってる”っていう、そういう女の子の状況を「jellies」はもっと突っ込んでうたった。“jelly”って、風俗の女の子がおまんこに塗るゼリーあるでしょ。

―― 濡れない時に塗るっていう? ああ、そのゼリー。

曽我部 そうそう、それについての歌。それが必要なことについての歌。

―― それは、言ってみれば岡崎京子的なアプローチだね。

曽我部 そういう女の子の独白。“かなしい、とかそんなんじゃないカンジ”という、なんか・・・・・・。

―― 歌詞カードもらってないから、リリック見ずに普通に聴いてて、そんなチャレンジングな曲とは気付かなかった。

曽我部 けっこうチャレンジしたんだよ?

── 波紋を呼びそう?(笑)

[下北沢の音]
―― ガムランみたいな音が入ってる曲があるじゃない。「s a m p o」かな。

曽我部 それはね、そこの棚にあるサムピアノっていうか、カリンバ鳴らしながら歌ったの。

―― カリンバだったんだ。ガムランに聞こえた(笑)。ガムランって俺、大好きでさ、87年だったかな。インドネシアに初めて行って、大学の卒業旅行で初めて行って、ガムランの魅力にとりつかれちゃって。ジャワ島から入ってバリ島まで、1ヶ月くらい旅程も何も決めずにずっとぶらぶら。HIGHTなところからLOWなところまで全部見たっていう旅で、ほんと面白かった。帰ってしばらく、現地で買ったガムランのテープを寝る前に部屋で流してて、すると幽体離脱のような、不思議な気分になるんだよ。ほんとに離脱したり、金縛りにあったりもしたんだけど(笑)。

曽我部 細野(晴臣)さんみたいね。

―― いや、ホントそうなんだよ。そうか、でもカリンバのこういう使い方もあるんだね。曽我部くん、アレンジのセンス相変わらずいいよね。

曽我部 そうですかねぇ。あんまり自分ではそういう意識はないですけどね。あんまり職人的なところで達者でいたくないんです。

―― アレンジャーとしてというより、楽曲に必要な音は何かっていうところで閃くんだろうけど。あと、あれ面白かったね。「現状2」のさ、開かずの踏切で、思わず“早い”って言うところ(笑)。

曽我部 あの踏切の音は入れておかないとな、と思って、記念に。高架になっちゃう可能性が高いでしょ。だから、伝説の踏切として音をアルバムに入れておこうと思って。

―― 貴重な記録としてね。

曽我部 録ってたら、本当にね、遮断機が上がったと思ったらすぐ下がって。

―― 俺、あの踏切けっこう好きなんだけどな。呑気なせいか、別に不便だとは思わないし。

曽我部 オレも思わない。それで、あの踏み切りに対する想いをこのコラムに書いたんだけど。

―― 「有名な踏切」ね。歌詞カードにこういうコラムが載ってるところも素敵だな、と思った。

曽我部 これね、最初は「これが六本木だったら絶対暴動だな」っていう文章だったんだけど、でもそう断定すると、六本木を仕事場とか生活の場にしている人に厳しいな、って思って、それで「これが六本木だったら、暴動がおこるかも」に変えたの。

―― 『sketch of shimokitazawa』は、こういう半分フィールド・レコーディングみたいなところがすごくいい。

曽我部 フィールド ・レコーディング!!

記録者 「かげろう」の車の音のタイミングも、絶妙ですね。

―― あれは偶然?

曽我部 家のベランダでちっちゃいMDプレイヤーで録りながら弾いてるだけ。そしたら、カラスが聴きに来た。

―― 偶然じゃなく?

曽我部 たぶん聴きにきたんだと思う。バサバサバサって来て、手摺のところにとまってずっと聴いてて、途中で居なくなって。カラスはすごく頭いいらしい。犬レヴェルだって。
最後に、シークレット・トラックが入ってるの。「トーキョー・ダブ・ストーリー」っていう。

―― どっかで聞いたようなタイトルだね(笑)。次は「ダブストーリーは突然に」って曲、作ってよ。

曽我部 (笑)最初に「トーキョー・ダブ・ストーリー」ってタイトルのが浮かんで、「トーキョー・ストーリー」でダブ作ったら、「トーキョー・ダブ・ストーリー」になるな!とか思って作ったんだけど、すでに90年代初期にピアニカ前田さんが「TOKYO DOV STORY」(DMX&ピアニカ前田・1995年)って曲やってた。

―― 7インチ?

曽我部 7インチかなぁ? ジャケを岡崎京子さんが描いてるのかな? 漫画のジャケで。オレはまだ聴いてないんですけど。

―― これフロアでかけると機能するかな。「ROSE PARTY」で試しにかけてみる?

曽我部 どうですかね? 低音はすごく出てるから気持ちいいかも。

―― このアルバムは、休日の朝とかに聴くと気持ちいいだろうな。コーヒー淹れながら、これかけて。いい一日の始まりになるね。

曽我部 あと雨の日。 雨が降ってる日。そういう限定された世界観のアルバム。

―― 1曲目の「かげろう」から、いきなりそういうムードあるしね。こういう作品をまた、ぜひ作って欲しいな。『sketch of shimikitazawa』はもうすぐ発売?

曽我部 もうすぐ。下北沢のお店に並びますね。(2005.6.16発売)

―― 下北限定なんだ。

曽我部 下北沢に遊びに来たおみやげのCDになればいいかなと。ある街のおみやげの音楽。それもアンビエントミュージックのひとつのありかたじゃない? そんなスペシャルなアイテムにしたいな、と思って。だから逆に、でっかい流通に載っけるのはよして。

―― それが似合うアルバムだよね。いつかアナログでも欲しいな。

曽我部 ホントだね。


[閃きが具現化しにくい構造]
―― こういうアルバムを、すっと前から作りたかったんじゃない?

曽我部 ずっと作りたかったんですよ。アコースティックでどこまでもメロウな。音数もすごく少ないアルバム。生活のなかのその裏側にある風景が何か見えるような。そういうのをずっと作りたいなって思ってて、ちょこちょこそういう曲がB面にずっと入ってたんですけど。アルバムとしては、初めてですね。これも、自分でレーベルやってたからできたんですね。商業的な意味では難しいかもしれない。

―― いわゆる、売ろうっていうアルバムではない?

曽我部 完全に好きなようにできたのは、売ろうっていうアルバムじゃないからこそかもね。だれのことも意識せずに作れた。

―― でも、充分にポップなものになってるんだけどね。音楽業界って、今、ふたつに分かれてるよね。ものすごくお金が動く大規模なプロジェクトは相変わらずあるけど、中間層にお金がぜんぜん掛けられなくなってて。だからアーティストもさ、レコード会社も一押しと二押しくらいまでは思い切り金掛けるけど、それ以外は一切掛けられません、みたいなことになってるんじゃないかなー。みんなお金無いから元気がなくなってる、っていうのはあるかもしれないけど、自分から活気を作り出していくパワーに明らかに欠けてる。

曽我部 そうだね。

―― だから、それをやってるROSE RECORDSはきっと目立ってくると思うよ、だんだん。

曽我部 そうすかねー。
―― 急に弱気じゃん(笑)。どうしたの?

曽我部 いやいや、大変なことも多くてさ。もちろんやりたいこととかさ、この前も言ったけど、オレのなかでは活気はあるんだけど、それを具現化するのはすごく大変だなと思って。

―― そんなにすぐには実現しない感じ?

曽我部 うーんと、でもなんかちょっと目先を変えれば、方法論を変えれば実現するかも。DIY(Do It Youselfの略。いろんなことをできるだけ自分の力でやってみようという思想)でなければ、すぐ実現するかも・・・とも思う。

―― ああ、何かの力を借りれば?

曽我部 うん、うん。そこのせめぎ合いは難しいな、と思って。例えばホームページ作ることになった時に、外注して、大きいきっちりした会社にドンって丸投げしちゃえば、あっという間に出来上がっちゃうじゃないですか。自分たちで手作りでやったものとは違うだろうけど。

―― ROSEの味って出ないよね、それだと。

曽我部 そうなんだろうね。

―― 今、自分はどこまでやれるのか、ってずっとDIYにトライしてるじゃない。その答えは、まだ見えない? それとも・・・もう半分くらい見えてて、それで迷ってるって感じなの?

曽我部 自分の力っていう、その辺はね、もうある程度、先週ぐらいにわかって。

―― 先週ぐらいにわかったんだ(笑)。

曽我部 先週、先々週くらいで、ここのところは必要だな、っていうのはなんとなく自分としては見えてきて、はいる。あくまでもずっとその渦中だから、これとこれが必要だって上手く整理する時間がない、っていうのがあって。ちょっと一回どこかでリセットボタンを押さないと、整理ができない状況になってるかな。

―― 曽我部くんぐらいのキャリアがあって、いろんな閃きをどんどん現実化していってる人、他にはあんまり見当たらないんだけど、誰かいるかな? そういうことをしたいという人が少ないのか、それとも諦めてるのか、それはわからないけど。

曽我部 そうだよね。例えば片寄明人くん(GREAT 3)とか、いろんなタイプの音楽やるじゃん、ああいうことがもっと活性化したら、同じような感じなのかもしれないし、もしかしたら活性化しにくい状況があるのかもしれないし、それとも、もっとゆったりしてるのかもしれないし。

―― 曽我部くんよりはゆったりしてるかもしれないけど、これまでは曽我部くんほどギアを踏み込めてなかったのかもね。でも、彼は彼なりに、今まででいちばんギアを踏み込み始めたところかもしれない。

曽我部 オレ、ソロのファースト『HEY MISTER GIRL!』(2000年)すごく好きだよ。

―― いいよね。この前、曽我部くんとモモちゃんも出てくれた『QJ』の結婚特集で片寄くんとショコラにインタヴューしたんだけど、今作ってる『Chocolat & Akito』っていうデュオ・アルバム、すごい良さそうだよ。ミックスだけシカゴに行って、ジョン・マッケンタイアとやるみたい。GREAT3としては今動いてないみたいだけど、最近メンバーとミーティングして、またこれから今まで以上にタフなバンドとして続けていけそうだって、うれしそうに話してたから。これから第二章スタートって感じで、アグレッシヴになっていくんじゃないかな。去年出た『Lost Virgin』(GREAT3のシングル以外の代表曲とベスト・ライヴを収めた2枚組ベスト)って、聴いた? あれ、超ヤバいよ。全曲録り直したのかっていうぐらい強力なリマスタリングが施されててぶっ飛んだ。あれ聴いたら、曽我部くんもサニーデイのベスト、きっと全部やり直したくなるよ(笑)。これからは片寄くんも、どんどん曽我部くんのようになってく予感がするな。

曽我部 楽しみだね。

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