DREAM MAGAZINE

曽我部恵一 フリートーク・ジャム’05 SUMMER #1

interviewed by natsuo kitazawa
photo by tadashi matsugi

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[デュオ・アルバム]
―― 片寄くんは、キャパシティを限定しないでMAXにするとどうなるのか、そこを見てみたいアーティストのひとりではあったから。早くそうなって欲しいな。これからの片寄くんには期待してるし、また曽我部くんとの対バンとか、イヴェントとかやって欲しいね。

曽我部 またやりますか。(註10)

―― 無理なくいい感じでできそうだよね。なんか、前に片寄くんと曽我部くんでデュオ・アルバムを作ったらいいだろうなって話を・・・

曽我部 言ってたよね、昔! お互い何曲かづつ作って、みたいな。

―― 声質の感じからいうと、片寄くんと曽我部くんはすごく合うと思う。ハモリの曲とか。今ならやろうって言ったらできるのかな?

曽我部 できる、できる。

―― よくさ、アメリカとかイギリスには、そういうデュオ・アルバムがあったりするものだけど、日本ではあまりないね。上田正樹と有山淳司の『ぼちぼちいこか』(1975年)ぐらい?田島貴男くん(オリジナル・ラヴ)と、青山陽一くん(グランド・ファーザーズ)が、80年代後半に一時“Amazing Soul Brothers”っていうデュオを組んで何回かライヴを演ったことがあって、カヴァーの選曲とか最高だったって聞いて、音源として残ってないのが残念だなって。

曽我部 カエターノとジルベルト・ジル(『Tropicalia2(トロピカリア2)』・1993年)とか、ブラジルではよくあるじゃない? ああいうデュオ・アルバム、日本ではあまりやんないよね。

―― なんでだろうね。

曽我部 そういうのって、各自の曲が数曲づつ入ってて、2、3曲くらいふたりで歌ってるみたいな、そんなに必然性がないんじゃないかなっていうのもあったりするんだけどね(笑)。そういうユルさが好きだけどね。でも、「デュオ・アルバム」みたいに言い切ってて、なんかいいよね。オレ、豊田道倫くんとかに前から、一緒にアルバム作ろうよとか、向井秀徳くんにやろうよとか言ってるんですけどね。

―― その組み合わせも面白いね。デュオ・アルバムには、けっこう好きなのあるんだよ。ママ・キャス・エリオット(ママス&パパス)とデイヴ・メイスン(トラフィック)とか(『Dave Mason & Cass Elliot』・1971年)、別にふたりの曲だけやってるわけじゃないし、いちばんいい曲はネッド・ドヒニーがデビュー前に書いた曲だったりするんだけど、すごく好きだな。あと、ピート・タウンゼンド(ザ・フー)とロニー・レイン(スモール・フェイセズ)のデュオ・アルバムとか。

曽我部 そんなのあるの?

―― 『ラフ・ミックス(Rough Mix)』(1977年)っていう、パブ・ロックっぽいアーシーなやつ。意外に知られてないっぽいけど。

曽我部 それ、知られてないっぽい(笑)。

―― 片寄くんとのデュオ、今度はさ、本当にやってみるといいよ。いい頃合いじゃない?

曽我部 企画してください。

―― あ、俺が企画すればいいのか。レコード、どこから出せばいいかな。

曽我部 どこでもいいよー。“ワン・ショット”(とりあえず1枚だけの契約)っていう概念が今は増えてきてるしね。

―― ROSEで曽我部くんが作ってる、この感じでやるのが、いちばん気持ちよく作れるんだろうな。片寄くんがショコラと作ってるアルバムは、メジャーのワン・ショットだけど、かなりインティメイトないい感じで作ってるみたい。豊田くんや向井くんとも、実現したら面白いね。豊田くんの最近のエッセイや小説も、すごくいいよ。

曽我部 豊田くん、オレほんっとに大好きなんだけど、オレのファンで豊田くん大好きっていう人、あまり多くないみたいなんだよね。

―― そうなの?

曽我部 だから一緒にライヴ演るとさ、理解できませんでした、みたいな感想がたまにあったりして(笑)。

―― それは、彼の音楽が徹頭徹尾リアリズムだからかなぁ。そこに街灯りのように滲む抒情が、ジンとくるんだけど、曽我部くんのファンは、現実に対してある種ロマンティシズムを投影する、そういうところが好きなんだと思うから、リアリズムで押し切られると抵抗を感じるのかもしれないね。

曽我部 リアリズムの膜を剥いだら、その下はすっごく美しいうたごころがあるから。だからみんなにぜったい聴いてほしいって思う。

註10 サイケデリック・イヴェント「The Electric Fool- Aid (Acid Test ?)」
「西海岸のフィルモア辺りで地味な2バンドが出演する、 みたいな感じのゆったりした自由なパーティをGREAT 3とやりたい」というサイケ・フリーク曽我部恵一の一言がきっかけで、1998年8月20日、新宿リキッドルームにてサイケデリック・イヴェント「The Electric Fool- Aid (Acid Test ?)」が開催された。
DJは北沢夏音。木村真也(オイル)、井上“ミック”光祥(舞台監督)というデッド・ヘッズには著名な両氏によるオイル&ライト・ショウをバックに、サニーデイ・サービスとGREAT 3が対バン。
幕間にラスヴェガス・ピンク・レディーズによるガーリー・ショウがハプニング的に上演され、アンコールでは両者合体バンド“GREAT-FOOL SERVICE”が、それぞれのライヴでの〈決め曲〉「ここで逢いましょう」〜「UNDER THE DOG」をメドレーで演奏.
会場限定でポスター(画家はおがわまさひろ)と3Dグラフィック眼鏡が販売されるなど、サマー・オブ・ラヴ前夜に、サイケバスによるトリップで知られるケン・キージー(映画『カッコーの巣の上で』の原作者)率いるフリーク集団メアリ・プランクスターズとザ・グレイトフル・デッドがサンフランシスコで行っていた、音と光と映像とLSDのミックスによる通称「アシッド・テスト」をかなり意識していた。
が、このピースフルな夜にLSDは必要ナシ、だった。


[ユートピアと現実を繋ぐもの]
―― そういう意味では、曽我部くんのファンは少しナイーヴなところがあるのかな。過酷な現実に胸を痛めているんだけど、それと向き合うのは怖い、みたいな印象がある。ちょっと問題発言かな?

曽我部 そこに向き合って行く足がかりに、自分がなればいいとは思う。

―― ナイーヴなのが良くないと言ってるんじゃなくて、あまりにナイーヴだと自分を守れないぐらい、現実がハードになってきてるから。

曽我部 オレのファンはやっぱりみんな同じようなヴァイブレーションを持ってると思うよ。

―― もしかすると、ある平和な共和国とか、そういうものを曽我部くんが築いてくれて、自分もそこの住人でいられたらな、っていう夢みたいなものを抱いてるのかもしれない。

曽我部 そう。それはものすごくオレも感じてて、そういう理想を提示するのは、ひとつはいちばん大事なことだけど、それはあくまでも虚構かもしれない。そこが本当にリアリティをもって地に足が着いた世界じゃないといけない、って言っていくことがもっと大事なことだと思う。
ユートピアを見せる。ロックンロールとはつまりそういうことかも知れない。でもそれがどんどん自分の世界に繋がっていくんだ、ってことを知らせたい。CD聴いてる間はうっとりするけど、それが終わったら病んじゃうんじゃ、ちょっと切ない。

―― 曽我部くんの音楽を聴くことが、逃避の手段になってしまうようじゃ良くないものね。むしろ、現実のいろんな問題と闘う、それと向き合う勇気を、乗り越えるためのエネルギーを充填するものであって欲しいな。

曽我部 ある意味逃避でもあるんだよね。でもそれが武器にもなるんだと思う。そこに重きを置きたい。ね、だから『ラブレター』ってこういう音楽になったんだよ。

―― そっか!なるほどね。曽我部くんがそういう意識を持っているんだったら、活動を通してきっと伝わっていくと思うから。ファンもそのうちだんだん強くなっていくんじゃないかな・・・。

曽我部 ぼくのファンがすごい弱いみたいじゃないですか(笑)。でもBBSとかで見てると、ハードな状況の人もけっこういるようだしね。

―― それを言ったら、ぼくだって、曽我部くんだってけっこうハードかもよ(笑)。曽我部くん自身は、ファンのそういう気持ちを引き受けることについてはどうなの? それはできないよって感じ?

曽我部 「ねむれないあの娘のために」でも言ってるけど、オレの引き受け方はうたうってことだけだと思う。だからライヴとかにおいても、ただ宗教的な感じっていうか、これやったらみんながこうなる、っていう盛り上がりって違うと思うし。ちゃんと自分の言葉で自分のことを伝えていくことが大事だと思う。みんなのリーダーとしてやっているわけじゃないんだよね、ただのシンガーだからさ。

―― だけど、みんなのお兄さん的存在でもあるから。

曽我部 そこは否定するつもりはないのね。だから、ちゃんと自分のことを歌わないとな、と思う。今はオレも生活してみよう、と思ってんだ、このハードななかで。で、一緒に共有できるものが生まれるし、乗り越えるべきものが見えるのかな、と思うし。

―― 「SAVE THE 下北沢」の運動に参加するのも、曽我部くんにとって、きっと大事なことだったりすると思うんだ。自分が住んでいるエリアに現実に起こってることに対して、これはヤダっていう意志を自分なりに表明することは、生活する上でいちばん重要だし、アーティストとしての活動ともリンクしているのが自然だしね。そういうことも含めて、今は現実から目を背けてはいられない時代。

曽我部 東京って、今、ハードな時代にさしかかったと思うんですよね。ぼくはかつて「街へ出ようよ」って歌って、シティ・ボーイであることの素敵さ、ある架空の都市としての東京の街で若者でいることの素敵さみたいなことを謳ったわけじゃないですか。もちろんいろんな光と影があるとして。そうやってきて、みんな街に住むことの楽しさを知ったとも思う。そんななかで、今がいちばんハードな季節かもしれない。オレもそうだし、聴いてる人たちもそうやって暮らしてる、今は東京に住むことが、すごい厳しいことになってるなー、とは思いますね。

―― 今はハードじゃない人を探す方が難しいんじゃないかな。地方は地方で、東京以上に厳しかったりするだろうしね。

曽我部 うん。そこで、ある幻想の街を求めるのは簡単なんだけど、それではダメだ。ハードななかでもっと素敵なものっていうか、自分にリアルに響くいいものっていうかさ。そういうのが、いちばん最高じゃん。例えば、夜、すごい綺麗な夜、呑みに行く、だれかとまたはひとりでコーヒー飲んでる、そういうリアリティ。そういうものをちゃんと、みんなで獲得したいなと思ってる。

―― ソロの出発点の「ギター」が、そういうものだったしね。本当に現実と一つになる歌だし、曽我部くんなりのロマンティシズムもそこにあって。ソロになってから曽我部くんが目指している地平に、最初から自然にフォーカスされてたんだと思う。

曽我部 出発点ではあるね。“戦争にはちょっと反対さ”って歌ったのって、「戦争反対!」って言ってみんなでデモ運動をする気ににならなかったオレがいる。そのことをうたいたかったから。でも、戦争にはもちろん反対。その気分をどういうふうにみんなでリアルなものとして共有していくか。そこがいちばん大事。でも、それはまだぜんぜん解決してないし。みんな模索してるんだと思うけどね。オレも、いっしょに模索していきたいな、と思うけどね。

―― あの歌を素晴らしいなと思うのは、自分の住んでいる街とニューヨークだったりバグダッドだったりが繋がってるんだという視点を、一曲のなかで、演説するのではなく〈街と自分〉を描写することで提示したからなんだ。1番は、自分の住んでいる家のベランダに雨が降っているのを曽我部くんが見ているシーンから始まって、下北沢とか渋谷の街にハルコちゃんを連れて一家で出かけて、世界中の文化が集まっている東京の良いところを楽しむ。すごくロマンティックで、渋谷系の持ってたピースフルな残り香がそこにある。そして2番では、“ニューヨークの空は、朝から雨が・・・”というふうに場面が切り替わって、世界が直面している危機感を曽我部一家が共有している。でも、“みんなの声”は夜空に吸い込まれてしまうし、現実にひとりになった曽我部くんは、自分の部屋、“心のなかのこの場所で”ギターを弾いてる。その間、TVではずっとニュースが流れてて・・・00年代を包む空気を一曲のなかで描き切ってる。
本当にあの曲は傑作なんだ。それなのに、あまりにも過小評価されてるし、誤解されてる。ジャーナリスティックな評価という点でも、俺のなかではMAXに近いのに、あんまりそういう声を聞かないのがすごい不満。未だに幼稚な解釈がまかり通っているようだし。曽我部くんが誠実に、正直に「自分はこうです」っていうのをちゃんと歌っているのと同時に、「戦争反対となぜか大声では言えない空気がある。だから部屋でギター弾いてます、レコードばかり聴いてます」みたいな人がいっぱいいて、そういう人たちの気持ちを代弁している。それがものすごくリアル。それで善しっていうわけじゃなくてさ・・・。

曽我部恵一
「ラブレター」
2005.7.25 リリース
ROSE RECORDS/ROSE24
¥2,000(tax in)

1.バタフライ
2.有名になりたい
3.ハルコROCK
4.ジュークボックス・ブルース
5.ねむれないあの娘のために
6.セブンティーン
7.抱きしめられたい
8.あたらしいうた
9.きみの愛だけがぼくのをこわす
10.ラブレター
11.吉祥寺
12.ぼくのBabyによろしく
(全12曲)


ROSE RECORDS ONLINE SHOP
(全曲試聴できます)
曽我部恵一ディスコグラフィへ 
曽我部 そう、そうだよね。

―― 全てはそこから始まってるから。「ギター」のその次、みたいなのは見えてきてる? 自分のなかでもだいぶ変化はあった?

曽我部 あそこが原点だとして、進んだとはあまり思わない。やっぱり、なんだかんだ仕事忙しくて、ライヴもハードだったり最高だったりしても、ある時は宇宙遊泳をしてても(笑)、その後は家帰ってポロンってギター弾いてるわけで。「ギター 2」みたいなものがいつできるかわからないけれど、やっぱり「家でギター弾いてるよ」っていうところに戻ってくるのかな。

―― そういう意味でも、あれが曽我部くんなんだよね。

曽我部 すごくいい意味で居心地のいい場所ですね。等身大だなっていう。なんかいいんですよ。


2005.6.8 夜 下北沢・ROSE オフィスにて


[追記]この対話が行われてから2ヶ月近く経った。ロンドンで大きなテロがあったり、相変わらず世界中でいろんな事件が起こってる。日本でも、これから何が起きるかわからない。現実と向かい合おうとすればするほど、無力感に苛まれるし、自分の足許さえ定かでないことに気づく。ぼくだって、嫌になるほどナイーヴなのだ。
そんなとき、曽我部くんのライヴに行くと勇気づけられる。彼は、単なるロックショウではなく、その場にいる全員がクリエイトするような空間を作りだして、「本気でやれば、みんなこれぐらいできるんだぜ」というシンプルなメッセージを投げかけてくる。
ロックンロールは、ぼくらを絶望の底から引っぱり出し、もう一度トライしてみようとする力を甦らせてくれる魔法の音楽だ。みんな、きっと経験あるだろう?

この対話のイントロダクションに、ニール・ヤングの「Rockin' In The Free World」を引用したのは、あの曲が、どうしようもない袋小路に陥ったこの世界の中で、あらゆる矛盾に囲まれて、それでもロックすることを歌っているからだ。まだ聴いたことがないけど興味を持った、という人がいたら、訳詞付きのCDを探して、ぜひ聴いてみてほしい(89年発表のアルバム『フリーダム』、及び2004年に出た『グレイテスト・ヒッツ』に収録。後者には特典のDVDに同曲のヴィデオも収録されていて、ニール・ヤング初心者には特にお薦め)。(北沢夏音)



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