DREAM MAGAZINE

曽我部恵一 フリートーク・ジャム’05 SUMMER #1

interviewed by natsuo kitazawa
photo by tadashi matsugi

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“LOVE LETTER and Other Words”
 『ラブレター』は、主人公が12人いるようなアルバム
4thアルバム『ラブレター』の発表と、『DREAM MAGAZINE』ウェブ版の創刊を記念して、曽我部恵一最新ロングインタヴューをお届けします。インタヴュー?それにしてはインタヴュアーが随分おしゃべりなんじゃない?と思う人もいるよね、きっと。でも、プロモーションでやってるわけじゃないので(ちょっとはそういう役割もあるけど)、いつものようにふたりでお茶飲みながら雑談してるのを、ちょっと補足して、そのままアップした感じ。普通ならカットするような話題も全部出しちゃってる。だから“フリートーク・ジャム”と呼ぶことにした。「ジャム・セッション」のジャム。「ジャム・バンド」のジャム。「ザ・ジャム」のジャム、「苺ジャム」のジャム(ちなみにぼくは杏ジャムが好きです)。約3万字の原稿を、曽我部くんの第一エッセイ集『昨日・今日・明日』を編集した脇裕子さんが、とても上手に構成してくれました。脇さん、どうもありがとう。
雑誌には紙数の制限があって、2時間とか3時間たっぷり話して、どこも切りたくないっていう時も、与えられたページ数のなかに収めなければ載せられない。でも、ウェブではそんな制約からかなり自由になれるから、そういうフラストレーションはありません。これからもいろんなゲストを交えて、ジャム ・セッションは続くはず。ここから何かが始まることを願って。感想はもちろん、異論反論、大歓迎です。ぼくらはこの対話をニール・ヤングに捧げる。Rockin’in the Free World !(北沢夏音)


[大作と習作]
── 前作『STRAWBERRY』から、創作のモードがいろんな意味でガラッと変わったよね。とにかく次から次にできる新曲をライヴで演っていって、ある期間の記録としてレコードを作るという。前は、テーマ設定とかすごく考えて、コンセプチュアルにアルバムを作る人だったと思うんだよね、曽我部くんて。特にサニーデイ時代はそういう傾向が強かった。何が何でも後世に残る名盤を作りたい、という気持ちでアルバムを作っていた。ところが、ソロになってからは、そういう発想がどんどん消えていって、日記のように曲を作り、「その瞬間のドキュメント」として音源を発表するようになった。まるでホームページの日記を更新していくように。

曽我部 なんかそういう感じしますね。『ラブレター』は、主人公が12人いるようなアルバム。リリックでそれぞれがオーバーラップしてくるようなところとかもあって、そういうコンセプト・アルバムみたいにつくりたかった。でも、もうひとつの側面は新曲が12曲できました、ってところでもあると思うんですよ。
何ヶ月か前に、若松孝二監督に会ったのね。監督がずっとやってるラジオのゲストで。その時、かつての早撮りの時代のことを根掘り葉掘りオレが聞いてたんだけど、(若松さんの)その時に今の自分がけっこう近いと思った。

―― うん、興味深い。もっと教えてそこのところ。

曽我部 アーティスティックなさ、キューブリックの映画みたいな完成された作り方をしていたと思うのねサニーデイのころとか。とにかく額に入れて仕上げるぞって。

―― 名盤指向で作ってたよね。ファースト(『若者たち』)とラスト(『LOVE ALBUM』)くらいじゃない?そういう発想で作らなかったのは。

曽我部 うん。それにしては本数が多かったけど。あれを絞ってたらキューブリックくらいに純度の高いものになったかもしれない。で、今ぜんぜん自分のモードが違くって、とにかくバンバン打ちまくるんだみたいな感じなんですよね。アトリエで大作の名画を作るってよりは、毎晩いたるところでグラフィティを描きまくってる感じ。それは、当時の若松さんがいっぱい(映画を)作ってる感じに近いのかな、と。ダメなのもあるんだって。ある時ビートたけしさんとか宮沢りえさんを起用して、何億も掛けてパリですっごくいまいちな映画(註1)を撮ったんだって。「オレはやっぱ、大名作を撮ろうとしてもダメなんだ。バンバンバンバン! もう自分でもどんな内容か覚えてないけど、撮りまくってた時期の作品の方をみんながいいって言う」という話を聞いて、なんか、そういう時期の監督のパワーが、今の自分がけっこうリンクしてて。

―― それ、なんかわかる。60年代、70年代の若松プロって、若い才能の梁山泊でもあり、なおかつフーテンの巣窟みたいな、いろんなやつが出たり入ったりしながら、すごい短期間に低予算・早撮りで作品を量産していた。曽我部くんが今、一緒にやってるバンドのメンバーとか、ROSE RECORDS所属のバンドやアーティストたち、パーティを手伝ってくれたり刺激を受けてる人たちとか、そういう他者との関わりのなかで創作のテーマがパッと出てきたりしてるよね。例えば、「有名になりたい」っていう新曲は、この間の「ROSE PARTY」(@三宿Web)でフードを作ってくれた・・・・

曽我部 画家の牧田純(註2)

―― そう、彼の一言から生まれた、とかさ。自分のなかから生まれてくるもの以外に、人との関わりのなかで生まれる曲が増えてる。

曽我部 そうっすね、そうっすね。それは大きい。アイディアが身のまわりから溢れてくる。そういうのから今は曲ができてる。もっと昔はちょっと違ったから。ノート開いて、さぁなにか記すぞって行為だったけど。今はパッと気づいたささいな事実を、歌にひろげていける。

―― 今やってることは、きっと曽我部くんにとって、すごく新鮮な、革命的なことなんだよ。だから曲がいっぱいできる。

曽我部 そうかもしれないね。

―― そのひとつひとつの記録が、例えば『STRAWBERRY』であり、ライヴ盤『shimokitazawa concert』であり、映画『青い車』のサントラであり、レーベル・コンピレイション『私たちの音楽 vol.1』であり、「SAVE THE 下北沢」協賛アルバムの『sketch of shimokitazawa』であり、そして最新作『ラブレター』であるという。自分でインディペンデント・レーベルを運営し、自分以外のアーティストの作品もガンガン、リリースする。しかも通販の作業まで自分でやる。ライヴもバンドと弾き語りを同時進行で、呼ばれれば日本中どこへでも行く。DJでも客演でも何でもやる──曽我部くんのこうした活動の全てを追ってると、何をやろうとしているか、言われなくても分かるはずなんだ。追っかけてない人にも伝わるかどうかは、まだわからないけれど、ちょっとでも触れたら、少なくとも、曽我部くんが今、放射している熱量の尋常じゃない巨大さは伝わると思う。でも、できれば全部聴いて欲しいよね。

曽我部 じゃないとどういう流れにあるかわからないかもよ(笑)。

―― 「とにかくこのムーヴメントに参加しない手はないぜ!」という。この爆発するエナジーに触れてシビれまくろう!(笑)『ラブレター』聴いたら『sketch of shimokitazawa』も聴いて欲しいし、『私たちの音楽』もね。リアルタイムで全部、聴いてみて欲しい。

曽我部 そうしてくれるとすごくうれしい。例えば今日日記を書いたこと、それも一個の作品で、別に売ってはないけど、売ってもいいのね。そういう表現者として自分が居られるように、ようやくなれたのかな、と思ってて。昔だとそれをものすごく絞り込んで、これは売るためのもの、こっちはそうじゃないものという思いがあったじゃない?

最近はどんな感じかっていうと・・・・・画家の作品集に習作が載ってるじゃないですか。あれも作品でしょう?作品として売られるわけじゃない。画家は意図していないのかもしれないけど、その画家が外に吐き出すものがあれば、それが全て作品になっていくっていうような感じでしょう?オレは、これまで音楽に対してもっと慎重に作ってきてたような気がして、今それがふわって溶けていいな、って。音楽に対してすごいフレンドリーになれたなって。

―― アーティストとしてはすごく良い状態だと思う。そのうちきっと、たくさん打ったなかから大当たりが出るかも・・・・・・って言うと、なんか駄作もあるって言ってるように聞こえるかもしれないけど(笑)、そんなことないよ、打率かなり良いんだよ〜!と言えるのは、ライヴを観てるからなんだろうな。

曽我部 そうだよね。アルバム一枚をとってうんぬんするってすごい難しいよね。今、いろんな街や場所で、いろんなライヴをやってるじゃないですか。それを観て、アルバムを聴いて、オレのホームページとか見て、それが全てリンクしての、ひとつの像を結ぶと思うんだよね。

―― そうだね。

曽我部 もちろんそこを目指してるわけだし、それをもっと強固にしたい。だから「活動家」って言ってるんだけど(笑)。でももちろん、このアルバム一枚だけで出逢うリスナーにもガツンと届けたいとは思ってるよ。


註1 『エロティックな関係』(1992年)パリで探偵事務所を持つ男とその秘書のもとに、愛人の浮気調査を依頼する男が現れる・・・。1978年に内田裕也が探偵役で出演したにっかつロマンポルノ『エロチックな関係』を、パリに舞台を置き換え、内田裕也自らの製作・脚本・主演でサスペンス・アクション・ロマンスにリメイク。
製作総指揮:奥山和由、監督:若松孝二、共同脚本:長谷部安春、音楽:大野克夫、
出演:宮沢りえ、ビートたけし、内田裕也、宇崎竜童、ジョー山中、佐藤慶
註2 2004年3月パシフィコ横浜で開催された村上隆主催の「GEISAI#5」で、審査員をしていた曽我部がスカウトした若き画家。
『私たちの音楽vol.1』にも牧田純とハニートーストとして参加。



[ドキュメンタリーあるいは今月のアルバム]

―― “ニュー・アルバム”って宣材(プロモーション用の資料)に書いてあるんだけど、こういう概念がもう古いのかも。これってさ、それこそ従来の名盤、大作主義のさ、「次の傑作ができました」みたいな匂いを引きずってる言葉じゃない。

曽我部 “今月のアルバム”っていうのはどう?

―― そうだね、それだよ!それ、いいんじゃない?毎月出すの大変だろうけど(笑)。買う方も大変か(笑)。でも、“今月のアルバム”的なコピーに変えた方がいいんじゃない。

曽我部 ほんとだね。これから変えよう。

―― だって、作る方も聴く方も、どれが“ニュー”なのか、もはやわかんないじゃん。雑誌を見る限りでは、世の中傑作だらけだしさ(笑)。“ニュー・アルバム”というより“曽我部恵一、2005年夏のアルバム”。なんかそういうものだね。

曽我部 「ギター」を作った時に、そういう「新聞の見出しのようにうたを作る」っていうイメージだけがあったじゃん。なんかそれを実現するのに、最初のうちは上手くいかなくって悪戦苦闘したんだけど、ようやくちょっとずつ、そのヴィジョンに近づいてきたような気がするんだよね。

―― それはたぶん、最初の2枚をメジャーで作ったから、というのも大きいんじゃないかな。ファースト『曽我部恵一』はROSEで出してもなんの不思議もない感じがするけど、セカンド『瞬間と永遠』はメジャーで出したって感じはちょっとする。メジャーで出したからダメっていう意味じゃなくて、どこか軽やかさに欠ける気がするんだよね。

曽我部 そうかもね。音楽に対してすごく慎重になってたかも。大事に作るのはいいコトなんだけど、やっぱ堅苦しくなっては、ね。

―― 作品的には『瞬間と永遠』も好きなんだけど、ちょっとサニーデイ後期に戻ったような気がする。せっかく自分でレーベルやってるんだから、“今月のアルバム”ぐらいのニュアンスでいいと思うんだよ。“軽い=薄い”とかそういうことじゃなくて、身軽さとか軽やかさって、活動を続ける上で大事だと思うんだ。
今回の『ラブレター』は、きちんと整理して作ったものではなくて、ものすごいスピードで飛ばしている曽我部くんの〈今〉の変化の過程をドキュメントしたもので、そういう作り方をすると、必然的に出すレコード全てが「過渡期の作品」になってしまうけど、今はそういう時期だし、それでいいんじゃないかな。このやり方が、曽我部くんの〈今〉を記録するベストな方法なのは間違いない。サニーデイの頃みたいに完全無欠の「名盤」が聴きたい、っていう声が根強くあるのは知ってるけど、今はたぶんそのときじゃないんだよ。それに、もしかしたら新しいファンにとっては、『STRAWBERRY』が『若者たち』、『ラブレター』が『東京』に相当する“出会いのアルバム”で、すごく思い入れがある作品として語り草になるかもしれない、って思ったりもするんだ。
話は変わるけど、『ラブレター』1曲目の「バタフライ」を聴いた時、「曽我部くん、最近エモコア(エモーショナル・ハードコア)とか聴いてるのかな?」と思って。

曽我部 ハードコア・パンクですね、どっちかというと。80年代の。最初、もうちょっと違う曲だったんだ。いろいろいじくってるとサビがこういうふうに変化した。最初はAメロの、メロウな、グルーヴィなメロディがどんどんつづいていくようなうただったんだけど。突然、爆発した(笑)。

―― “ウォウォウォウォ〜”っていうコーラスはあったの?

曽我部 あった。

―― あそこがエモみたいに聴こえるポイントかもしれない。
曽我部 この曲は銀杏BOYZがコーラスで参加してくれてるの。ドラムの村井くんとベースの安孫子くんが。

―― そうなんだ。聴いてたのは海外のハードコア?

曽我部 そう、アメリカの。村井くんたちがオレに教えてくれたの。だから参加してもらったんだ。これ、すげぇ熱が出てて寝込んでる時に作ったんですよ。スタジオでやってみたら、なんかわかんないけど熱いっていう曲になった。たぶん熱のせいだと思う。

―― これまでの曽我部くんには無い完全な新機軸だったから、すごい新鮮だった。曽我部くんの声質にはあんまり合ってないかな、と一瞬思ったけど、ライヴで歌い込んでいったら、もっとしっくりくるかも。
これを1曲目に置いたというのは、「以前のぼくとは全然違うんだ!」という、曽我部くんの宣言だよね。昔の曽我部くんしか知らないファンやメディアの人たちが聴いたら、びっくりするかもしれない。8曲目の「あたらしいうた」も「バタフライ」と同じ激しさを持った、まさに“新生ソカベ”を象徴する名曲だと思う。サニーデイ「東京」の、10年後の続編という重要な意味もあるし。聴き比べるだけで、街がどれだけ変わってしまったか分かる。この曲に続けて「君の愛だけが僕のをこわす」が来るという、ハードに畳みかけてくるこの流れは、『ラブレター』の白眉じゃないかな。

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