DREAM MAGAZINE

「ランタン・パレードへの10の質問」

interviewed by keiichi sokabe
photo by tadashi matsugi

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「入浴して 入浴して 素敵な夏になりますように」と歌う男、ランタン・パレードとの出会いは1本のデモ・テープだった。
2004年、春。醒め切った世界観の奥座にめらめらと情熱の炎をともしているような音楽に、ぼくはいっぺんに夢中になってしまった。
時代の新しい「ソウル」をつねに探し求めているぼくにとって、彼の紡ぎ出す都市型ニュー・ソウルは、喧噪から逃れてちょっと一服できる最高の喫茶店みたいなもの。
ほの暗く輝くその店の中では、ヒップホップとフォークとポエトリー・リーディングとジャズとハードコア・パンクが流れている。熱い濃いコーヒーを飲もう!
そして彼が歌う。「大団円などないよ、君には明日があるんだ」

さらに研ぎすまされたランタン・パレードの最新アルバム
あくまで華麗にスウィングし、やわらかくメロウにこぼれ落ちるそのサウンドが何故か今夜も胸にグサリグサリと突きささる。
リリックを読みながら聴いていると、熱いものがこみあげてくる。うわついた表現ではなく、ひとりの生活者としての確固たる意志と強さをひしひしと感じるのだ。
ハードコア・パンクをルーツに持つランタン・パレードの出生の証がそこにある。
そして彼が歌う。「達観などしてたまるものか。ランタン・パレードは行く!」ランタン・パレードと名乗るこの新しいアンチ・ヒーロー、清水民尋に10の質問を投げかけてみた。


質問1「曲ってどうやって作ってるんですか?」
清水 「あ、ここいいなサンプリングしよう」って。サンプリングありきですね。普段音楽聴いててメモ帳置いてて、「あ、ここのフレーズ抜けるな」とか、「あ、ここキックだけくっきり聞こえるぞ」とか、「スネアのバンっていうので曲始まるな」とかっていうのをメモして。
曽我部 なるほどね!ノートにね!
清水 そうですね。あと歌詞もフレーズだけを書きためてたりするんですよ。
曽我部 「ニューヨークシティ」を「入浴して」って書いたら面白いんじゃないか、とか(笑)?
清水 そうです、あと漫画の中のフレーズとかプロレスラーの名言とか、あと普通にテレビとか観ててひっかかったらそれもメモしておくとか。
曽我部 「FUNと不安をかけたら面白いなあ」とか(笑)。


質問2 「仕事と音楽について」

曽我部 清水くん仕事してるじゃない、僕もしてるけどデスクワーク。僕の友達の画家の純くんも掃除の仕事してるの。
清水 肉体労働ですね。
曽我部 この間下北の定食屋でメシ食ってて彼曰く、「仕事場のみんな、ほんとに有線で流れてる音楽しか聴かないんですよ」って。ほんとに音楽のこと別に何とも思ってないって。なんかね、仕事で車運転中にイラクのこととか戦争のこととか話したんだって。そしたら「古っ!それ古いね」とかって言われたんだって。いや古いじゃないじゃん、今実際に起きてる話じゃん、って思うんだけど、だいたい運転中にほとんど女の子の話しかしないんだって。「話すことがないから女の子の話しかしないんすよ」って。で、そういう状況でそれがすごい刺激になるんだって、ほんとにね。それで家に帰ってぶわーって絵を描くんだって。
清水 あ、逆に刺激になるってことですか?
曽我部 「なるほどね、『お前ら全員死ねー』って思って絵を描くんだ」ってぼくが言ったら、「いや、『死ね』じゃないんですよ、そういう奴らを理解したいんですよ」って言ってて、あ、なるほどなって思った。要するに一人のアーティストっていうのがアトリエにこもってひたすら内省的に作っていくのとは違うじゃん。実はものすごく地に足の着いた制作の仕方だなって、俺はその時思ったんだけど。
純くんは純くんでそういうところが、もちろん話の合わないバカばっかりだしムカつくけど、でも刺激になるっていうふうに言うんだけど。で、清水くんも仕事してるじゃないですか。そういうことって何か作品に少なからず影響してくるんじゃないかって思うんだけど、清水くんの場合は仕事をしてるいい点としてどういうところがある?
清水 いいとは別に思わないですね。
曽我部 出来ればしたくない? 音楽だけしていたい? 仕事はただただ生活のため?
清水 そうですね、それで食えるなら。
曽我部 ものすごく俺が感じるのは、生活してる人の歌だと思うわけ、Lantern Paradeって。それが何かゆるい表現とは違うなと思うんだよね。そこがすごいなあと思うんだよね。
清水 はい。
曽我部 生活してる中での憤りとか、感じた感動とか、怒りとかがしっかり入ってるなと。仕事してることってどう思ってるんだろうなあっていうのが聞きたいなと思って。
清水 出来たらしたくないです。寝たい時に寝て、起きたい時に起きるみたいな生活がしてみたいです。


質問3 「怒りについて」

曽我部 「憎しみよりも怒りがあればそれで十分なんだ」って歌ってる。なんかそういう怒りの対象がすごくあるなあと思って。でも「お前らふざけんなー!」みたいにならないのはどうしてですか? そういう怒りがものすごいメロウな中で歌われてるじゃないですか。
清水 はい、それはパンクでハードコアやってたから(笑)、もうやったからいいか、と。
曽我部 「達観などしてたまるものか!」っていうのはどういう意味?
清水 ああ、やっぱり悟りとかひらいちゃいけないなと、迷って生きろ、一生迷って生きろ、と。


質問4 「東京について」
曽我部 東京という街について。タミーさんは僕と同じ四国出身なんですけど、生まれも四国?
清水 そうです、愛媛県です。
曽我部 松山市?
清水 や、違うんですけど育ったとこは。生まれたのは母親の田舎で八幡浜っていう所なんですけど。
曽我部 好きですか? そんなに戻ってないらしいですけど。
清水 はい。10何年で1泊しただけです。東京来て。
曽我部 この10何年間で1泊しただけ・・・。
清水 しかもそれは母方の祖父が亡くなった時で。田舎は嫌いではないです、今はすごい印象いいです。
曽我部 記憶の中の街だよね。
清水 でも高校の時とかいる時はもう早く出たくてたまらなかった。何でこんな所いるんだろうって思ってました。
曽我部 いざ出て記憶の中になると印象いいもんだよね、故郷って。別に戻らないってとこに固執してるわけじゃないんでしょ?
清水 はい、時間とお金があれば全然帰ってみたいですけど。
曽我部 東京に出てきて10何年になるわけですけど、東京は好きですか?
清水 好きです、大好きですね。
曽我部 どういうところが好き?
清水 駅ごとに街があるじゃないですか、ああいう感じが好きですね。
曽我部 いろんな街が点々とあって。
清水 やっぱり情報が多いってところなんですかね。
曽我部 でもさ、タミーってインターネットもやったりとかしないし、テレビとかは見たりとかする?
清水 見ますよ、パソコン持ってないんで。たまに漫画喫茶とか行って見ますよ。
曽我部 ただパソコン持たない主義でも何でもなく? 携帯も?
清水 はい。別にお金とかあれば持ちますよ。ただ、家に電話あるからいいやって。
曽我部 (笑)。東京の嫌なところもあると思うんだけど、東京だから嫌なところとか。
清水 や、特にないですね。地震とかは怖いですけど。
曽我部 ああ、あとほら隣の人が誰だかわかんないとか、家出てすれ違っても挨拶しないとか、そういうのは別に?
清水 別に・・・それは自分の実家でなければどこでも同じじゃないかと思いますけど。でも一応今のアパートの人とすれ違う時、挨拶はありますけどね。
曽我部 松山との決定的な違いっていうのはどこなんですか?
清水 何ですかね、刺激ですかね。僕自転車で散歩するのが好きなんですけど、松山は遠く行っても何もないんですけど、東京は何かしら街があってそこに例えばレコード屋さんがあるとか、別に過去に来たことはないんですけど懐かしい感じのする場所があったり、お地蔵さんとかあったりするだけで感動する。


質問5 散歩の仕方
曽我部 さっきも出たけど散歩の話。愛媛でもしてたの?
清水 してましたよ、一人で自転車ですけど。
曽我部 散歩はずーっとしてたの?
清水 多分親父の血なんですけど、自転車で日本縦断するような人なんで。
曽我部 それ自転車に乗るんですか?
清水 はい、自転車ですね。歩きだと疲れるんで。
曽我部 いや、自転車でも縦断すれば十分疲れると思うんですけど(笑)。
清水 でも自転車の方が楽な感じがするし、あのスピード感も・・・。
曽我部 そうですね、俺どっちかというと歩きが好きなんですよ。でもタミーは自転車派なんだよね。
清水 歩きで散歩なんて考えられないですね。
曽我部 ずいぶん遠くまで行くんでしょ?
清水 行きますよ、立川とかまで(笑)。それで警察の人に呼び止められるんですよ。「どこから来ました?」とか聞かれて答えると驚かれますね。
曽我部 へえ〜・・・それって休みの日には頻繁に?
清水 いや、ちょっと気合いの入った日は・・・。
曽我部 今日は立川まで行くぞじゃなくて気が付いたら立川だったんだ。
清水 そうですね、どこまでも甲州街道とかをまっすぐ行くと。
曽我部 海まで行こうと思ったことは?
清水 ありますよ、全然行きます。平和島の方とかまで。
曽我部 よく行く?
清水 よくではないですけど、冬とか寒い時期はあんま散歩しないですよね(笑)。
曽我部 なるほどね(笑)。それで海にたどり着いて海を見るでしょう、ひたすらずーと海のところにいてそれで帰ろうかな、と。
清水 そうですね、競艇場とかもあって。

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