DREAM MAGAZINE
第一回 下北沢政治素人放談 2005年8月18日、ローズオフィスにて
下北沢のスケッチ
寺澤今日みたいな話は、政治に興味を持つ人ならすごく食いつくと思うんだけど、そうじゃない人にとってはまだとっつきにくいかな、って。

曽我部このサイトを見てる1日1万人近い人が、投票に行こうかなって思ったらそれはそれですごいことだと思うし、それを目指してるんだよね。

桜井そこで寺澤さんみたいに、「放っておくと配給制で飯を食わされるかもよ」ってなると「やべえ」みたいになると思うんだよね。

曽我部思わないだろー(笑)。僕は政治に関する知識としては、ほとんど一般的な人のレベルですけど。

神谷日本が配給制になるって姿を想像できないんじゃないですかね?

桜井いやー、このままだと日本はあっという間に三流国に落ちぶれると思うよ。

佐藤でもそれはあまりにも先すぎますよね。曽我部さんだったら下北沢再開発に反対する歌とか作れるんじゃないですか?

曽我部いや、実はこの前、『sketch of shimokitazawa』ってアルバムでやってるんですよ。でも大きな声で「再開発やめろ!」って言ってるわけじゃなく、普段の下北沢での生活を歌うことで、「こういうのがいいじゃん」っていうのを表現してます。中を見てもらったらわかるんですけど、ビラとか入ってるんです。

桜井こんな下北沢の状況をひとつの国家として考えたらわかりやすいよね

寺澤そうそう。それの積み重ねが「国家」ってことだし。

曽我部この道路じたい、何十年も前の計画で、今僕らが言ってるのは「道路を通すな」じゃなくて、もう1回ちゃんと「今」の状況で考えて下さい、ってことで。

寺澤諫早湾みたいなことはマズいと。下北沢の反対派の人たちは対案を出してるんですか?全然見えないんですけど。

曽我部そうそう。代わりの案を出して、ってことで。

寺澤じゃあメディアの取り扱いが下手なんですね。

桜井今のメディアを担ってる人ってバカが多いからな(笑)。

ただなんとなく生きてる
寺澤ただなんとなく生きてるって若い人が増えてませんか?

曽我部うん、「ただなんとなく生きてる」っていうんじゃなくて、大きな流れの中で今が過渡期だから、その中で「なんとなく生きざるを得ない」ということになってしまってる人が多いだけだと思うんですけどね。その先に何かがきっとあるとは思うんだけど。こうしよう、とか、ああ生きようとか言えないけど、潜在的にはいろんなことを思っていて。ただ、まだ発言してないから何も考えてないといわれてるだけのような気がするんだけど。下北沢には昼間からバイトもしてないような若い奴らがいるじゃん。チャラチャラしてさ。俺はああいう奴らが大好きでさ、何かに向かってる人たちだとは思うよね。でも政治的ではないよね。

桜井さっきの話に戻るのかどうかわからないけど、自分がリスペクトできる人間、例えばミュージシャンでもなんでもいいよ、そういう人たちがポール・ウェラーのように何かを言ってくれるとずいぶん違うんじゃない?

曽我部俺はそれは違うと思うんだよ。やっぱり下北沢でダラダラやってる奴らと俺は地続きだからさ、俺が先生として彼らに何か言うっていうのも違うような気がしてさ。突然誰かかっこいい人がさ、政治について教えてあげようって言ってもさ、キョトンとするよね。
行ってみるってのがまず重要だから
司会曽我部さんは今「下北沢の若い連中が好きだ」っておっしゃってましたけど、じゃあ彼らに政治に興味を持たせて、選挙に行かせるにはどうすればいいんでしょうね?

曽我部というよりも、今回は俺も選挙に行こうって気になったわけで、きっとあいつらも同じような考えを持ってるんじゃないかな、って思うんです。だったらどこに投票すればいいのかな、っていうのが知りたいわけです。

桜井政権を変えてみる、っていう発想がいいんじゃないかと思うよ。究極のことをいうと、どこの政党が正しいのかって、本当はわからないんだよ俺も。でもこんなふうに何も変わってない国を、一度俺たちの力で変えてみて、4年間くらい別の政党に任せてみようかな、と思うわけ。そんで4年後にもう1回判断すればいいじゃん、て思う。で、俺がオススメするのは民主党。なぜならここで共産党に入れても政権が変わるところまでは行かないだろうし。今、数的に民主党が政権に一番近いから、ちょっと民主党に入れて政権を1回変える経験をしてみよう、ってわけ。どんなふうに変わるのかを、自分たちで体験してみようって発想で。

佐藤基本的に政治家ってろくでもないので、政治家個人に期待しても意味はないわけです。政党単位で考えるべきですね。で、どこに投票すればいいかというと、お父さんお母さんが公務員とかで、天下りすることで自分が食わしてもらってるような奴だったら、亀井新党(国民新党)とかに入れるべきだし、それ以外は民主党に入れると面白くなるかな。

曽我部そういう投票の指針みたいなのって他にありますか?

佐藤僕は電気屋をやってるんですけど、そういう奴らは共産党に入れろって言われますよね。組合のつながりがあるから。お父さんが大工とか電気屋の人は共産党に入れましょう。

寺澤僕はサラリーマンですが、自民党に入れます。変わる変わらないっていうのをどこで感じるか、ってことだから。与党が民主党になったとしても、やってることが同じなら意味がないわけで。民主党の政策内容を見ると、確かに大きく何かが変わると思うんですが、そんな政策では日本が持たないんじゃないかな、と思うんです。例えばさっきさんは4年って言ってましたけど、その4年の間に、めちゃくちゃになるんじゃないかな、って不安があるのがひとつ。もうひとつは小泉の言ってることは、曲がりなりにも「小さな政府」ってことで。そんな改革の流れをもっと評価してやってもいいんじゃないかな、って。自民党って言っても「小泉自民党」で、守旧派は別です。ただその後に来るのは「自己責任社会」かもしれないけど。

曽我部吉本さんはどこに投票するんですか?若者に聞かれたら何て答えますか?

司会(吉本)実はまだ決めてないんですよ。でも多分小泉自民党かな。郵政民営化を進めてもらって、その後どう変わるか見てみたいですね。あそこまで小泉がこだわってるんなら何か意味があるんじゃないかな、って思って。宅急便業者と同じ土俵で価格競争してもらって、送料が安くなったら面白いし。

神谷郵政民営化には賛成なんですがドイツみたいに半民営がいいんじゃないかな、って思います。だからどこに投票しようか、今すごく悩んでます。半民営って案を民主党が出せば民主党に入れるし、公務員削減って方向性を亀井新党が出せばそこに入れるし。うーん。ぴったりした政党がないんだよね。

寺澤今の神谷さんの意見ってすごく大事で、ぴったりフィットした政党がなければ投票にも行きづらい、っていうのはありますよね。

桜井民主主義に「ぴったり」って意見はあり得ないんだよね。そこをまずあきらめないと。天秤にかけて、より「マシ」な政党を選ぶ感じかな。

神谷共産党も好きなんだよね。名前を変えてくれれば入れる。「商工会議党」みたいな(笑)。

曽我部俺はみんなの話を聞いてきて、桜井君と一緒かな。郵政民営化でメール便が安くなるとかならないとかよりも、政権が変わるのを見るのが面白いと思う。民主党が政権をとった時のデメリットもわからない。ただそうなった時にわからざるを得ないと思う。知るんだと思う。だから自分としてはまずそれに興味を持ってみたい、という感じ。

司会「祭り」に参加する感じですね。


寺澤戦後日本でそういう機運が高まったのって2回あったと思うんです。60年代末の学生共闘と細川政権誕生の時。で、学生共闘のことを言うと、村上龍の『69』って小説を読むとわかるんですが、あいつらって政治的な主張よりも、「女にモテたいから」とか「面白いから」とか、そういうことだったみたいなんですよ。その後に日本がどうなったかってことを考えないといけないんですよ、単に「面白いから」って動く前に。そのころ共闘してた奴らって、今会社のお荷物としてリストラ対象になってるわけですよ。実は彼らって先を考えてなさすぎ、って思うんですよ。

司会ということは、曽我部さんと桜井さんの意見にアンチの姿勢ですね。

曽我部面白がって安易な行動に出るなよ、と。

桜井でも実際に政権が変わったことってないじゃん。

寺澤細川政権がありますよ。でもあれって典型的な「祭り」だったじゃないですか。その後に何も残さなかったし。社会党と連立して「自社さ」政権って訳わかんないもん。そんなノンポリ政権が不良債権を増やして、今もその後始末に苦労してるわけですよ、日本は。今うまく小泉が処理できなかったら、自分たちの子供がそれを背負うことになるんですよ。そこまで考えての「祭り」ならいいんですけど、意外と考えられてないんじゃないかな、って思います。

桜井俺はわかりやすく言ってるだけだよー(笑)。ちゃんと考えてるよー。

寺澤うん、それならいいんですけど。でも民主党の中も一枚岩じゃなくて、右派・左派に分かれてて、旧社会党の、さっき言った連立政権を維持できなかった連中が「祭り」「祭り」って言ってるような気がするんですよ。そうなったらちょっとヤバいかな、って。

桜井俺は、もし、またしても自民党が過半数をとったら、もう選挙に行かないかもしれないな。失望で。

寺澤でも小泉なんてあと1年で任期が終わるんですよ。

桜井いや、もし今回で政権が変わらなかったらもう行きたくないよ。日本を出たいなあ。

曽我部僕は初めての投票だから、やっぱりダイナミックな動きが見たいなあ。そこでどう心情が動くかはわからないけど。

寺澤曽我部さんの考え方で、「先を考えない」っていうのもありだとは思いますよ。先に待っているであろう痛みとか、マイナス部分を心配していたら、多分ダイナミズムなんて生まれないですし。そういう意味ではその考えも支持できますが、その痛みのことを若い人にどうやって理解してもらうのかなあ、って心配になりますね。

曽我部いやあ、これはね。もう1回やろうよ、この話し合いを。もう1回やらなきゃダメ。第二部をやらないと。

桜井この選挙の後に、小泉なり岡田なり新しい政権ができてさ、2年くらい経てば「やっぱりダメだったよね」とか「けっこう良かったよね」とかっていうのがわかるから。

曽我部だからもう1回やろうよ、選挙の後で。そんで僕の心情、みんなの心情がどう変わったか。桜井君が果たして本当に日本を出てフランス人になってるかどうか、とかさ(笑)。

全員(笑)

曽我部じゃあとりあえず選挙に行こう、行ってまた考えようよ。行ってみるってのがまず重要だからさ。


司会では民主党に入れる方は?

曽我部・桜井・神谷・佐藤(挙手)

司会では自民党は?

寺澤・司会(吉本)(挙手)

司会ここでは民主党政権が誕生しましたね。おめでとうございます(笑)。

全員(拍手)

司会しかし今日の内容って、反響がありそうですねー。それも含めて楽しみましょう。ミュージシャンと政治って昔から物議をかもし出してきましたからね。ジョン・レノンを例に出すまでもなく。今回の投票率ってどうなるんでしょうね。

神谷いや、70%を超えるとは言われてますよ、今回は。

曽我部例えばアフリカはどうかとか、知りたいよね。

司会じゃあそれは次回までの宿題ってことで調べておきます。

(つづく)

テキスト作成・編集 吉本真一


追記
この放談の翌日に、今回は寡黙であった佐藤氏からメールが届いた。素晴らしい文章だったので、そのまま掲載させていただく。

『対談を終えて』  佐藤公哉

話していて、途中からずっと思っていたのは、ポップ・ミュージックの政治参加の有効性、ということだった。
曽我部さんがスタイル・カウンシルの話を例に挙げているのを聞いて、それを思ったのだが。それで私が思い出したのはフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドのことだった。ポール・ウェラーは真正面から「政治を良くしよう」というメッセージを発していたけど、フランキーの場合は、レーガンとブレジネフのそっくりさんが殴り合いをするというお笑いプロモーション・ヴィデオを作って、それがバカ受けして曲も大ヒットしたりした。
「例えば『自民党ファック!』みたいな歌を歌っても、画としてキマらない」みたいな曽我部さんのお話には私も深くうなづいた。我が国では、そうしたメッセージをエンターテイメントにできるほど、政治をめぐる表現というのは、成熟していない気がする。少なくともポップ・ミュージックの世界では。
そう思うと、「労働党に投票しよう!」というポール・ウェラーやビリー・ブラッグたち(レッド・ウェッジ)もそうだし、フランキーのギャグみたいなものまで娯楽化できるというのは、イギリス文化の成熟度の現れと思う。
しかし外国のことを羨んでいても始まらない。日本で有効にやれるやり方はないものか。

対談でも言ったけれど、クレイジーケンバンドが横浜市の「ゴミを減らそう」という運動のキャンペーン・ソングを歌っていたのは、私にとって、ちょっと画期的だった。仕事で横浜市内にいる時、ゴミ収集車が通ると、収集車から横山剣さんの歌声が聞こえるんだもの。それでもって剣さん、中田横浜市長に「行政っぽくないとこが最高! 横浜はこうでなくちゃ」とか言われたりしている。それを聞いて私は中田さんにかなり好感を持った。残念ながら私は横浜市民ではないので、中田さんには投票できないが。

曽我部さんが下北沢再開発反対運動に関わっていることは対談前に聞いていたが、そのためのCDまで作っておられることは存じ上げなかったので、CDを渡されてびっくりした。帰宅して聴くと、元々の曽我部さんの表現世界を曲げて歌うわけではなく、「下北沢の心象風景」をテーマに、曽我部さん独特の叙情性が存分に発揮された内容になっている。
こうしたスタンスは素晴らしいと思う。これを聴いた曽我部ファンは皆、下北沢のことを想うだろうし、何らかの行動にも移るはずだ。
対談終了後、「世田谷区長とは会ったんですか? ポップ・スターが区長と会うなんて一番のアピールになると思う」と申し上げたら、曽我部さんはまだ区長とは会ってないそうだ。それで帰宅後、世田谷区長のことを調べたら……あーなるほど(苦笑)。このお爺さん相手じゃ、曽我部さん、剣さんみたいには行かないや(笑)。
それはさておき。国政レヴェルのことを歌にするほどには成熟していなくても、都政や区政のことならエンターテイメントとして成立する。有効性も(たぶん)ある。それが判っただけでも今日は、曽我部さんにお目にかかった甲斐があるというものだ。みんな曽我部さんの『scketch of shimokitazawa』を聴こう。そして投票にも行こう。

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