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世界で最も投票率が低い国司会(吉本)ではここ、下北沢のローズオフィスにて、政治放談を始めたいと思います。曽我部僕は「若者はどうして選挙に行かないか」とか「なんで僕は行かなかったのか」とか「次に行ったら誰に投票したらいいのか」とかそういう疑問をド素人として皆さんに聞きたいです。 司会では、今回の選挙には行きますか? 全員行きます。 司会ではこれまで選挙に行かなかった人に聞きます。どうして行かなかったのですか? 曽我部僕はたまたま行かなかったのではなく、意図して行きませんでした。それを一度自分のHP上で言ったら、ものすごい勢いで叩かれまして(笑)。「俺は日本の政治なんてどうでもいい。日本がどうなってもいい」みたいに言ったんです。「フランス人に生まれたかったので、日本なんてどうでもいい」って。そしたら、「子供もいるのに、そんなこと言うな」ってね(笑)。 桜井そりゃそうだね(笑)。それは批判してる人が正しいよ。 曽我部そう。で、アナーキズムというのがどういうものか、あんまり詳しく知らないんですけど、「意識的な無関心さ」というか、例えば戦争のことに関しても僕は、「意識的に参加しない、戦争になったら逃げる、法律を破ってでも」と、そういうスタンスなんですよ。割と国家とか法律とか政治とかには、その範疇(はんちゅう)になるべく入りたくないなあ、とそういう意識があるんですよ。でもまあ、こうやって暮らすことじたいが、政治の中で暮らすことなんだけど、そこが非常に矛盾してることでして。そのBBSではいろんなやり取りがあって、「選挙なんて誰に入れても一緒だろ」と言う奴ももちろんいたし、「そういう奴らを意図的に増やして政治に利用している奴らもいる」というような意見も書き込まれてて。それで、ああだこうだあって。で、「わかった、来年の選挙に俺は行ってみる」と、こう言ったんですよ。それで話は落ち着いたんですけど、結局行けなくって(笑)。 全員(笑) 曽我部「ああ、選挙だなあ」とは思ったんですけど、ツアー中でね。行けなくって。で、次がやっと来たな、と。そしてこれは僕のなんとなくの勘なんだけど、今回の選挙は今までの選挙と違うな、という印象があるんですよ。それはなんでか、というと、前回の投票率は50%くらい?もっと下? |
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神谷都議会選挙なら40%台ですよ。世界で最も投票率が低い国ですよ。若者はほとんど行ってませんよ。 桜井40%台?本当?それは知らなかった。 曽我部だからこれは多分、みんなが自分と近い感覚を持ってると思ってんの。で、僕が関心を持ったということは、みんなも同じように関心を持ってるんじゃないかな、と思って、桜井君としゃべってたんだよ。だから次は行ってみようかな、と。何か違うんじゃないかな、と。そこで、何が違うんだろうとか、違わないんだろう、ということをみんなにうかがいたいんです。 桜井僕もそう。最初に選挙に行った28歳までは、曽我部君と同じように「俺 には関係ねえや、戦争になったって絶対行かねえや」というような、ちょっとバ カっぽいアナーキズムを持ってたんだよね。で、ふとある日気づいたんだよね。 この毎日の生活っていうのに政治が絡んでるということを。コンビニでジュースを買うたびに消費税を払ってるわけで、それってもう政治なんだよね。政治が自分の生活の中に入ってきてるんだよね。こっちは「冗談じゃねぇ」なんて思っててもあっちは侵入してくるわけで。それで「やっぱり(選挙に)行っとこう」と。それに中学の時に習った「主権在民」で、俺たちが主権者なんだ、それをちゃんと行使しなくちゃ、って思って行ったんだけど。でも最初の選挙はコケるよ。せっかくちゃんと政治を意識して投票に行ったんだけど、結局1票じゃ何も変わらない、ってことがわかって最初は必ずズッコケるよ、「アレ?」って(笑)。 全員(うなずく) 司会期待が大きかった分、落胆も大きいんですよね。 桜井それが日本の今の状況を端的に表してるんだと思うけど。さっき神谷さんが言ってたけど、ダイナミズムがまるでないのね。普通外国とかだと、政治の世界で間違ったことをすると政権が変わるんですよ。例えばこの前、スペインのマドリードでイラク派兵に反対するイスラム過激派のテロがあったけど、その後にすぐ選挙があって、イラクから撤退することを公約に掲げていた政党が勝つわけ。そういうふうに、本当は民主主義国家というのは、なんかこうダイナミズムがあって、政権が変わるんだよね。ところが日本って、何しても変わったためしってないわけ。まあ一度だけ(細川連立政権で)チラッと変わったこともあったけど。基本的には戦後ほとんど変わらない。そういうダイナミズムがあまりにもないから、ちょっとコケるんだよね。 曽我部なんでダイナミズムがないんですか? 寺澤自分は日本史が好きなので、その視点から考えるんですけど、日本が明治に入るまでの1850年間くらいは、ずっと封建主義なんですよ。トップがいて、その下に政治をやる人がいて、その下に地方を司る人がいて、その下に民衆がいる、っていう。だから普通の民衆が政治のことを考えずに暮らしていけた、という時代が1800年以上続いたわけですよ。そういう時代を経てきた日本人のDNAにも影響があると思うんです。考え方が染み付いているというか。それが急に明治維新でドン!と変わって、普通の人も政治に参加できるよ、と。ただ明治維新のフタを開けてみても、結局はトップ階級の抗争なんですよね。下がぜんぜん関係ないところで勝手にドンパチやって、支配階層のヒエラルキーは変わってない、というのが戦前まで続いてて。国民性みたいなものになってるわけです。 桜井だから民主主義ってどういうものか、という素養が日本人の中に染みてないんだよね。 神谷そして戦後日本は、アメリカ抜きに物事を決められない状態なんですよね。アメリカに言われて、いやいやながら従ってるという面があるんですよね。しかもアメリカに逆らうと、トップが首を切られる、っていう。 寺澤それにですよ。戦後の選挙ってすごく投票率が高かったらしいんですよ。でも当選した人の顔ぶれは、新宿のバーのママみたいに、「祭り」のような状態だったんですよ。人気投票みたいな。民主主義で一般人にも票がもらえた、なんでもできる、って言ってもそんな状態だったようです。その時代から今まで残ってる政治家を見ると、結局かつての支配層が連綿と続いて残ってる、という。権益を持ってる人たちだったわけです。だから1850年続いた国民性ならば、やっぱり時間をかけて変えていかなきゃならないと思うんです。だから僕らの世代が投票に行くのには意味があるとは思うんだけれども、現実にはすぐに返ってこないかもしれないんです。それが50年、100年先に根付くための、いわゆる将来の日本に対する投資ですよ。 曽我部なるほどねー。 司会なんだかもう結論が出てしまいましたねー(笑)。 全員(笑) 桜井 それではこれにて終了、と(笑)。 曽我部ものすごく納得できる意見ですねー。でも次の選挙でババッと変わったりしないですかね? 桜井いや、可能性はいつもあるんだよね。例えば今の国政の投票率は60%以下なんでしょ?それが70%とかになったらすごい違ってくると思うんだよね。無党派層(支持政党を決めてない人たち。日本の3割だと言われている)が何かのきっかけで意識を持ったらね。 寺澤その無党派層をどうやって変えていくか、が鍵だと言われてますよね。 |
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「選挙に行きましょう♪」って曲を作るのってどうですか?桜井「どうして若い世代が政治に興味を持たないか?」寺澤ビートたけしさんが言ってたんですけどね、「選挙にこれだけ行かなくて平和にやっている国って、それだけで素晴らしい」って。政治のことを意識しないで暮らせる国って、それだけで良い国なんじゃないか、と。 桜井もうそろそろ、そうでもなくなってきてるんじゃないかな。だって先進国の中でゴールがない国って日本くらいなもんだから。「ゴールがない」っていうのは、例えば他の先進国は65歳まで生き残ればあとは国が年金なんかでなんとか暮らせるようにしてくれる、っていうものなんだけど、日本にはそれがないから。そのゴールがすごくあいまいで、だからみんなビビってお金を使わなくなってきてるわけ。こんなのを平和だって言ってるのなんて、みんな見えてないだけだと思うんだ。 神谷それってどこの国のことですか?だってフランスだってホームレスがすごくたくさんいるじゃないですか。 桜井日本のホームレスとよその国のホームレスは実態がすごく違ってますよ。神谷さんはフランスやイギリスのホームレスを見たことありますか?日本のと全然違いますよ。生活の質は向こうの方が全然良いですよ。日本は汚いまま放っておかれてるから。イギリスには「スクワット」っていう「家のない人が空き家に住むことを認める」っていう法律さえあるんだから。あと『BIG ISSUE』っていうホームレスだけが販売できる雑誌があって、例えばストーン・ローゼス(イギリス・マンチェスター出身のロックバンド。フォークロックとダンスミュージックを融合し90年代のUKロックシーンを牽引した。現在は解散)とかは2枚目のアルバムを出した時に全くインタビューに答えなかったのに、『BIG ISSUE』にだけは答えて、それが売れるとホームレスがなんとか生活できるっていうことさえあったし。 |
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曽我部僕は今の話で思うのは、平和っていうのはいろんな形があるし、戦争をやってる国の中にも平和的なものがあるんだけど、ストーン・ローゼスとかが『BIG ISSUE』だけに答えたとかさ、あとはスタイル・カウンシル(イギリスのロックバンド。The Jamを解散したポール・ウェラーがミック・タルボットと結成。その洗練された音楽は今でも信奉者が多い。現在は解散)とかもあんなにオシャレなのに「こっちに投票しようぜ」みたいな曲を歌っちゃう、そんなリアリティーが日本で持てないっていうのがどうかな、と思うんだよね。僕はそういうスタイル・カウンシルみたいなのはすごくかっこいいと思うんですよ。でも日本じゃあり得ないですよね。そんな先進国のミュージシャンが政治のことを歌ってかっこいいっていうのがあるのに、じゃあ俺が「自民党FUCKだぜ♪」とかね、そんな曲作りたくないのよ。でもそんな曲を作れた方がかっこいいと思うのに。(忌野)清志郎さんみたいにさ。 寺澤それが「ウケる」「ウケない」っていうのは状況の話ですよね。「さまになる」ってことですよね。自分がやってみて、自分がさまになる、っていう主観的な見方と、もうひとつはそれが「さまになってるね」ってみんなが言ってくれるような客観的な見方ですよね。まず自分が主観的にかっこいいと思えるか、という信念を持つということがひとつ重要なことだし、多分それを持てる人っていると思うんですよ。だけどそれが受け入れられないとするなら、それは過去からの連綿とした流れ、つまり国民性ってことに尽きると思うんです。そういうものを変えようとするには、やっぱり1つのバンドじゃつらいので、うまくやっていくにはやっぱり草の根活動になっちゃうのかなー、って。例えば鳥肌実(右翼ふうの演説芸で有名な芸人)って、あれは芸ですが、あんな感じで政治に対する切り口を持つことはできると思うんですよね。右翼団体からの弾圧にも負けずに芸を続けてるわけですよ。そういうことを続けていくのが草の根活動なんじゃないかな。 曽我部でもそれとスタイル・カウンシルとかはまた違うよね。 佐藤フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド(イギリスのバンド。サンプラーを使ったダンスミュージックが80年代に一世を風靡した。代表曲は『リラックス』。現在は解散)みたいに、ただバカにしているというだけじゃないですか? 桜井今さっき寺澤さんが言ったことでさ、やっぱりそれをかっこいいって思ってくれるリスナーが圧倒的に少ないね。もしも曽我部恵一が「自民党FUCKだぜ♪」って歌っても、ファンはそんなことを思ってもみないから、ポカーンってなっちゃうよね。 曽我部その前に僕が「自民党FUCKだぜ♪」って思ってないのもあるよね。 桜井日本で今、政治意識の高いバンドって言ったら、例えば、ソウル・フラワー・ユニオン(93年に結成された日本のバンド。活動中)なんかが挙げられると思うけど、盛り上がってるのは本当にコアなファンだけで、それ以外の人は自分にそんな意識がないからポカーンしちゃってるんじゃないかな。スタイル・カウンシルがかっこいいのは、そういうイギリスの若い人たちの政治意識が高いからなんだよ。だからそうやって歌った時に、ダイレクトに響くわけだよね。 曽我部意識が高いというのには、なんかいろんな語弊があるかもしれないけど、みんなが政治に参加して、っていうコンセンサスが取れてるってことだよね。 寺澤あとは「影響されにくい」っていうのもあるんじゃないですか?自分の主軸があるから。 曽我部ポール・ウェラーは「労働党に投票しようぜ」って言ってる? 佐藤言ってます。それで「ニール・キノックス」って名前をおぼえたくらいですからね。日本のどの新聞にも取り上げられないようなイギリスの野党の党首を『rockin' on』誌だけは書いてた記憶があります。 曽我部そういうことを言えるイギリスのミュージシャンとはすごい距離を感じるなあ。 寺澤あの国では、ミュージシャンがそういうことを言っても、若者のアイデンティティーが確立しているから、宗教みたいに流されないっていう安心感がありますよね。いろんなファンがいるから、ポール・ウェラーのそういう態度も楽しめてしまう、という感じで。 桜井例えば曽我部君が「自民党FUCKだぜ♪」って歌ったとして、ファンの一部は「私はそうは思わないけど、曽我部君の姿勢はかっこいい」と思ってくれた時に、すごくさまになるよね。 神谷「選挙に行きましょう♪」って曲を作るのってどうですか? 曽我部そういう歌は歌えるけど、アーティストとしての「表現」にまで昇華できないんですよ。 桜井「今の日本、なんかヤバいぞ♪」ってことなら歌えるんじゃない? |
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神谷日本も70年代初頭までは普通に歌えたんですけどね。フォークとか。それがかっこいいことだったんですよ。僕は今でもパンタ(75年に電脳警察を解散したPANTAのソロ活動)さんファンだったりしてます。まあ、音楽的クオリティーも高いですから。だいたいメッセージに偏(かたよ)っちゃうと曲がつまんなくなるものですし。 桜井うん、それは大きい。音楽は芸術である以上、まずは芸術としてのレベルが高くないと、いくらメッセージを盛り込んだところでダメだよね。メッセージがある場合はなおさら高くないと。 寺澤僕なんかポストパンクなんかに中学の頃から興味を持ってるんですけど、それってDIY(DO IT YOURSELF)の感覚じゃないですか。「自分の意見は自分の頭で考えなさいよ」ということが、10年とかのスパンで考えると最も投票行動に効果的じゃないかと思います。実は選挙に行くこととかどうでもよくって、自分が生きていくことってどういうことか、ということを考えるのが重要じゃないかな、って。 曽我部僕が言いたいこともそういうことなんだ。 寺澤だからそこを表現する芸術、これは音楽でも映像でもアートでもなんでもいいんですけど、そこをバックボーンとして表現する何かが出ることで、イギリスのような状況につながっていくんじゃないですか。 曽我部生きるとか、生活することにもっと意識的になることで、もっと自分の力でそこを開拓していこう、ということだよね。 寺澤だから70年代フォークが廃れていったのは、自分の浅い考えによると、そのシーンを切り取っていただけじゃないかな、と思います。例えばはっぴいえんど(70年代初頭に活動した細野晴臣、大瀧詠一、鈴木茂、松本隆による伝説のバンド)の曲なんかにしても、すごく良い曲なんだけど、ある風景を切り取っていただけでバックボーンっていうのがあんまり見えない。細野さんのインタビューとか読めばバックボーンとかがわかるんだけど、それを読まなきゃわからないっていうのだと、なかなか定着しづらいのかな、って。今はインターネットというメディアがあって、そういうテキストを読めばいくらでもわかるとはいえ、やっぱりいちいち検索しなきゃわからないから、状況的には同じかな、と思います。90年代のインタビュー雑誌全盛の頃みたいなのにしても同じかな。 曽我部そう、音楽ってそことは関係なく残っていくからね。「ストロベリーフィールズ・フォーエバー」(ビートルズ中期の名曲。ジョンがリバプールの孤児院のことを歌った)って何のことだかわからないもんね。でも音楽が良いからそれだけ残っていくからね。社会と芸術の結びつきがあるからかっこいい、ってことじゃないかもね。音楽が何によって強度を持ちえるかということだと思うけどね。 |
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佐藤最近そういう例があってですね。クレイジーケンバンドが横浜市の「ゴミを減らそう」という運動のキャンペーン・ソングを歌っていて、横浜を歩くとゴミ収集車からケンさんの声が聞こえてくるんです。 全員へぇー。 佐藤ああいう横浜の中田市長の姿勢を見てると、行政とポップミュージックとの関わりがとても自然でリアリティーがあって、面白かったですけどね。「選挙に行こう♪」ってい言うとリアリティーがないけど、横浜市から委託を受けて、ゴミの歌を作るのって自然だなあ、って。そういうことかもね。 全員(うなずく) |
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