DREAM MAGAZINE

エンケン旅行記

文・曽我部恵一
なにかを探しに

3ステージのすべてが終って、脱力したぼくが残された。達成感からはほど遠く。
このツアーのおおざっぱな感想を言うことができない。得たものを語ることができない。
ただ、ぼくのこれからの毎日にいくつもの指標ができただけだ。

東京に帰ってきて、ぼくはエンケンさんに話しを聞きに行こうと思った。
その旨をメールする。

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僕達もあれから曽我部君と謙坊との楽しい旅の思い出話をしきりにしてます。
14日午後5時あたりはどうですか?
でも前後時間操作は『生まれそうな』曽我部社長にお任せします。
もしもその時は日にちずらしもOK!
時間があったら先日話した近所のタイカレーを食べに行きませんか?

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インタビュー

そしてある昼下がり、エンケンさんはこんなことたちを、ぼくに話してくれた。


そうだね、俺、入念にリハーサルやる方だね、まあ自分のためだから。お客さんに俺の一番いいとこ観て欲しいからなんだけどね。あと自分が失敗したらそれが一番悔しいから。それが一番なんだよね。プロだからちゃんときちっとやらないといけないなあって。

俺、昔歌い出した時からそうなんだけど、お客さんって一人一人来てくれて有り難いなあって思うわけ。そこに甘えちゃいけないと思うの、例えばコンサート来る途中で下手したら交通事故に遭う人もいるかもしれないし、帰りに「いやあ面白かったね」なんて言いながら不慮の事故に遭う人もいるかもしれないし・・・・。みんなお金握りしめて、自分のこう稼いだ金でちゃんと来てくれて、それに応えないと友情はないよなって思うから。そういうのがずっとあるんだよね、それ応えられなかったらプロじゃないし。
何しろお客さんが自分ちに来て嫌な思いして帰って欲しくないじゃない、せっかく来てくれたのに。そういうのが根底にあるんだよね、誰に教えられたとかでもないんだけど。

歌い出した時からそれはそうだね。誰かが「エンケン歌ってくれ」って言ったわけでもなくて、急に「この野郎!」と思って誰が頼んだわけでもなく自分で曲作って歌い出して。自分で始めたことは自分でちゃんとケツ拭かなくちゃなって思って。
実際俺、すごい怠け者なんだよね、めっちゃめちゃ怠け者だしね(笑)。起き上がるまでよーいしょなんて1時間くらいかかっちゃうし、そういうふうだから。でも音楽だけはなんか違うんだよね。だから俺にとっちゃちょっと宗教みたなところがあるんだろうね。


曽我部くんは曽我部くんで全部一人でやってるなって思って、それはその人の生活してきた幅広さだと思うんだよね、趣味の幅広さ。なぜ俺がそう思うかというと、こうやって話しててもやっぱり通じるところあるじゃない?通じない人も多いからなあ。

ジャズとかフォークとかロックとか(胸を指して)全部ここにあると思うから、全部表現してやりたいんだよね。 ジャズの人いろいろ好きでこいつに負けない音を出してやろうって思うんだけど・・・・。すごい好きなんだよ、ラリー・コリエルとか。でもそのままやろうとは思わないんだよ絶対、多分真似とか出来ないと思うんだよ。そういう暇あったら自分の出したい音出した方が楽しいしね。
大多数の人がそうやって好きだって一生懸命真似して終わっちゃう気がする。フォークとかロックとかきちんと分けてそういうのがスマートだと思っている人が多いよね。

今度のアルバム・タイトルは『ど素人はすっこんでろ』にしようと思うんだ。本当に誰かに「このど素人!」って言いたい時ってあるじゃない? 

俺、上手いとか下手とかじゃなくてちゃんと自分のやってることに責任とってくれる奴はプロだと思う。

いくつになっても70になっても80になっても一つの事やってる人ってかわいいじゃない。要領の悪い汚い格好してようが。そういう人好きなんだよね。別に誰に迷惑かけることなく一人で好きなことやってる奴って、格好いいよね。
俺、「かわいい」っていうのは格好いいことだと思ってるから。根底的に「かわいい」っていうのは幼児語だって言う奴が何年か前にいて、ほら「笑っていいとも!」とかでも言うじゃない「かわいい〜!」って。曽我部くんがゲストで出た時も「かわいい」って言われてたけど言われたら実際うれしいんだよね。俺、それは根底だと思うよ。

「かわいい」以上に世の中動かす言葉はないと思う。かわいいって触りたいってことだもん。これって宇宙の根源というか。+と−の世界がそこにあって、俺はそれは根本だとずっと思ってる。
わざとかわいいんじゃなくて、自分にとって好きなものにかわいいものに歌っていけたらいいなあって思う。

なんか偉そうに大人になれよとか言う奴いるけど、俺から見るとそういう奴って全然大人じゃないんだよね。

集約するとやっぱり「かわいい」って言葉だよね。かわいいから優しくしたいし、かわいいから憎しみが起こって殴ったりもするし、戦争も起こるし、それ以上のことはないと思うんだよね。
知識人ぶって「かわいい」は幼児語だとか言うやつがいて、何言ってんだと思ったよ。昔さ、「日本語でロックはできるのか?」っていろいろあったじゃない、あれと似てるよね。そういう論争があったようにさあ、この国は変な国だなあって(笑)。

自分のこときちっとやればいいんだからどこ行ったってアメリカ行ったって同じじゃないって思って、「東京ワッショイ」って歌った。
話は飛ぶけど、『草枕』ってあるでしょ。夏目漱石の『草枕』ってトイレとかにも貼ってあるんだけど、冒頭で「東京ワッショイ」とほんと同じこと言ってるんだよね。「向う三軒両隣りにちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。」(夏目漱石『草枕』より)人間なんだから鬼の住む国で暮らすのは大変なんだからここでちゃんとやろうよ、って夏目漱石が言ってるの。これ覚えようとして1年くらいトイレに貼ってあったんだ(笑)。いい言葉、「東京ワッショイ」もこういうことが言いたかったんだ。

お客さんはもちろん好きだよ。かわいいからね。嫌な奴もいると思うんだけど、どっか似てると思うんだよね。あ、俺もこうかなあこういう部分あるかなあって。

大昔「僕の歌を聴いてくれるあなたに」っていう歌があって、なんかライヴ・レコードに入ってたな、あ、『黎明期ライブ』ってやつだ。
「僕の歌を聴いてくれるあなたに」、だからそういう気持ちはずっとあるんだろうね。たいがいなんかそういうこと言わないでわざと歌ってる奴多いじゃない、本当はそう思ってるくせに。俺はやっぱ言っちゃうね、だって誰かに聴いて欲しいから人の前に行くんだもんね。だから素直に言いたいな、本当にそう思うんだもん。


はじまり。または、おわり

ここでこの旅行記は突然終わる。そもそもこれはただの自分のための記録である。
饒舌になる前にノートを閉じたいと思う。
「エンケン旅行記」とボールペンで書かれた小さなノート。
ぼくはまたいつの日かこのノートを開くだろう。
その日のぼくは何を探そうとしているのだろうか。




映画『不滅の男 エンケン対日本武道館』

 監督・主演・音楽 遠藤賢司、製作・配給 アルタミラピクチャーズ


映画『不滅の男』
前人未到、唯一無二、エンケンが挑む武道館ライブとは。
武道館のアリーナに忽然と立ち現れた“200台のアンプを積み上げた”<富士山>。その下には<四畳半の廃屋>。縁側の外には、洗濯物が揺れている。軒先には<柿の木とグランドピアノ>。アリーナを突っ切る<あぜ道>には枯れススキがざわめいている。その先端に<ドラムステージ>。
2005年1月24日、エンケンは、生涯最高のライブパフォーマンスで武道館に挑んだ。そして監督も自らが務め、その全てが遂に映画となった。

劇場公開スケジュール
◆2005.10/15〜 テアトル新宿
 10/15よりレイトショー 連日21:20〜
 毎週火・木は、ミュージシャンズDAY 音楽に携わる(プロ・アマ・学生)方は、割引料金にてご覧になれます
 劇場窓口で鑑賞券をお買い求めの方には、特製ポストカードプレゼント
◆2005.11/5〜 テアトル梅田(大阪)
◆2005.11/5〜11/11 レイトショー/ シネモンド(石川)
◆2005.12/10〜12/16 シネ・ウインド(新潟)
◆2005.12/10〜12/14 レイトショー/ シネマスコーレ(愛知)
◆2005.11/19〜12/02 京都シネマ(京都)
◆2005.12/10〜12/16 桜坂劇場(沖縄)
他、全国順次公開予定

EVENT
10/15 初日舞台挨拶(本編上映前) 遠藤賢司+マル秘ゲスト
10/22 秘蔵特典映像上映(本編上映後) 「エンケン対日本武道館メイキング!決戦24時(仮題)」
10/29 オールナイトイベント(深夜0:00開演予定) 「エンケン映画特集+トークショー」
11/05 トークショー(本編上映後)超大物ゲスト交渉中!乞うご期待!!

映画主題歌&映画サントラCD
◆映画主題歌アナログ盤「純音楽魂の唄」
特製缶バッジ&映画前売券セット限定発売 定価2000円(税込)
◆映画オリジナルサントラCD「不滅の男 エンケン対日本武道館」
10/15発売  定価2500円(税込)

純映画「不滅の男 エンケン対日本武道館」公開記念ライブ
11/1大阪:シャングリラ 11/2京都:磔磔 11/21名古屋:得三 11/24東京・吉祥寺:スターパインズカフェ

遠藤賢司公式ホームページ
エンケン秘宝館

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