DREAM MAGAZINE
DREAM MAGAZINE #8  page1/3
10年目の『東京』
東京コンサートにまつわるあれこれ
インタビュー/構成:大久保和則
  ジャケットいっぱいに広がる満開の桜と、向かって左上にデザインされた「東京」の文字──
1996年にリリースされたサニーデイ・サービスのセカンド・アルバム『東京』は、ファースト・アルバム『若者たち』で注目を集めはじめていた彼らへの評価を決定的にした作品として知られている。サニーデイ・サービスというバンドの代表作であり、リリースから10年が経ったいまも、フェイバリットに挙げる音楽ファンは多い。
10月6日にリリースされる曽我部恵一の『東京コンサート』は、その『東京』の全曲を、歌とアコースティック・ギターだけで再演したライヴ・アルバムだ。それは、“10年目の『東京』”であり、“新しい『東京』”であり、“たったいまの『東京』”でもある。『東京』を聴いたことがなくても、曽我部恵一の新作として楽しめる作品である一方、『東京』を愛してやまないという人、特にリアル・タイムで聴いていた人にとっては、さまざまな感情が、めくるめく光景が、まるで波のように押し寄せてくるであろう作品だ。
9月21日、夜の下北沢で、『東京』のこと、『東京コンサート』のこと、それらにまつわるあれこれを曽我部恵一と語りあった。『東京』と『東京コンサート』をつなぐ、“昨日・今日・明日”。『東京コンサート』を聴きながら、そしてコーヒーでも飲みながら、この文章を読みすすめてもらえたら、と思う。

『東京』前夜
「『東京』(*1)が出たのは1996年の2月だから、まだ24歳か。いま24歳の女の子とかに会うと、『若いなぁ』って思うけど、そのぐらいの歳だったんだよね。当時はライヴもしてなかったから、たまーにスタジオに入って、次の作品の準備をするみたいな感じの生活かな。『若者たち』(*2)のころはまだ大学に行ってたけど、『東京』が出るのと同時ぐらいにやめたと思う。お金もないし、チンタラしてたなぁ(笑)。だから、何日も予定がないなんて当たり前でさ。レコーディングって言っても、あらかじめ曲があってちゃんとプリプロしてから入るって感じじゃなくて、空いてるからとりあえず入るみたいな(笑)。いちおプロなんだけど、自分たちのアンプもなくてね。スタジオにある機材を使ってレコーディングしてたっていう。『ロッキング・オン(・ジャパン)』の兵庫(慎司)さんが取材に来て、びっくりしてたことをいまでも覚えてるもん。『もしかして、ドラム・セットもスタジオの?』って訊かれて、『そうですけど、それがなにか?』って(笑)」

それは、香川から上京し一年あまりが過ぎた曽我部に、ちょっとずつ変化が訪れている時期でもあった。『東京』がリリースされる少し前のことだ。

「『若者たち』を出して少ししたら、新しい出会いが増えていって、東京の生活がやっと楽しくなっていったんだよね。それまでは、なんだか八方ふさがりみたいな状況でさ。東京に憧れて上京してきたはずなのに、なんか違うなぁって。東京の生活って、岡崎京子(*3)さんの『東京ガールズブラボー』(*4)みたいな感じなんだろうなって思ってたんだよ(笑)。ホント、何も知らないただの田舎モンだからさぁ。毎晩パーティーがあって、そこでいろんな人に出会って、お互いが好きな音楽の話をしたりできるんだろうなーって。それでも、『若者たち』を出したあとは、その憧れてた生活に少し近くなっていってた。渋谷のインクスティック(*5)に出かけたり、そういう中でハッピーズ(*6)に出会ったり。このころの想い出って、いまだにすごいキラキラしてるイメージが残ってる。そのキラキラしてる感じが、『東京』につながっていった気が、いま思えばするかな」

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※1.サニーデイ・サービスのセカンドアルバム。2006年2月21日リリース。
※2.サニーデイ・サービスのファーストアルバム。2005年4月21日リリース。
※3.
1980年代末〜1990年代半ばのポップカルチャーを華やかに彩った女性漫画家。
『Pink』、『リバーズ・エッジ』など時代を象徴する傑作多数。90年代以降のマンガに与えた影響は計り知れない。
1996年5月、自宅近くを夫と散歩中、飲酒運転の車にはねられ意識不明の重体に。以降休筆。
http://www.demeken.net/okazaki/mover.html(message for OKAZAKI KYOKO)
http://page.freett.com/tach/okazaki.html
http://www.asahi-net.or.jp/~aq4j-hsn/okazaki/index.html
※4.
初出:「CUTIE」1990.12〜1992.12(単行本(初版):宝島社1993.1.20上巻、1993.2.10下巻)岡崎京子長編第七作目。
舞台はテクノやらニューウェイブなんて言葉が若者たちに浸透し始めた80年代東京。上京してきた女子高生サカエちゃんとその友人達の東京での遊びの空気感があふれ出てくる作品。『くちびるから散弾銃』はサカエちゃん達が社会人になった続編。
※5.
渋谷公演通り(渋公の向かい)にあった伝説のクラブ。渋谷系〜フリーソウル〜和物がおだやかに融和していた場であった。
現在の東京を代表するDJでここでプレイしなかったDJはいないほどのハコで、ライブも頻繁に行なわれていた。
六本木、芝浦にも系列店があり、サニーデイはアマチュア時代、インクスティック鈴江に数回出演。
『東京』リリース前夜の1995年に渋谷に出演。この時のイベントは<自由に歩いて愛して>。
※6.
1990年代初頭よりグループサウンズや黒人音楽の影響を受けた音楽性で活動し、ファイルレコードより1枚のマキシシングルとミニアルバムを発表。90年代半ばより音楽性を70年代フォークロック的なものに進化させ、1996年ミディよりアルバム『都会のハッピーズ』をリリース。メジャー2nd『アンドロメダ急行』をリリース後、解散。 ヴォーカリスト中村ジョーは、NYパンク〜ガレージ的バンド<JOEY>を経て、現在ソロとして活躍中。今春、ROSE RECORDSよりソロデビューアルバムを発表した。
http://www.joenakamura.com/index.html
(オフィシャルHP)
http://www.sokabekeiichi.com/rose/joe.html(ROSE RECORDS HP)

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