| DREAM MAGAZINE #9 page1/3 | ||
| 曽我部恵一が登場しない、
曽我部恵一の音楽の特集 あるいは、〈ラブシティ〉に辿り着くまでの、道しるべのような文章 |
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| インタビュー/構成:大久保和則 | ||
| 今回の「ドリームマガジン」では、曽我部恵一のニュー・アルバム『ラブシティ』のリリースを前に、アルバムのレコーディングに参加したミュージシャンたち、スタッフたちに取材をし、その証言から、『ラブシティ』が完成するまでの軌跡を辿ってみたいと思う。題して、「曽我部恵一が登場しない、曽我部恵一の音楽の特集」。曽我部恵一が、『ラブシティ』で描こうとした風景を夢想しながら、ふだんはあまり聞くことができない参加ミュージシャンやスタッフの貴重な言葉に耳を傾けてみて欲しい。その言葉たちを紡いでいったこの文章が、まだ見ぬ<ラブシティ>に辿り着くまでの道しるべになることを願いつつ。それでは── はじまりのはじまり 「最初はローズの事務所でデモっぽいものを作ってたんで、そのセッティングを手伝ったりしてましたね。打ち込みして、サンプリングして、リズムを組んでっていう。そこに、本人がベースのフレーズを弾いたり、ギターを入れたりして。時期的には、今年の1月ぐらいかな?まだ寒い時期だった記憶がありますけどね。最初は、ここまで作りこんだアルバムになるとは想像できてなかったです。こんなにいろんな楽器が鳴ってるイメージではなかった。『音数を少なくしたい』みたいなことを本人も言ってたような気がしますし。でも、曽我部恵一っていう人は、作っているうちにどんどん変化していく人ではあるから、言ってたこともやりつつ、広がっていった感じなんじゃないかなって思いますね。ただ・・・・・・デモを録り始めた時から、『ラブレター』とは違うものになるな、とは感じてました。」 そう語るのは、サニーデイ・サービス時代のアルバム『24時』(※1)からエンジニアを務める吉満ひろゆき。現在のローズレコードのスタッフの中では、曽我部とのつきあいが最も長い人物だ。 「エゴを捨ててるとまでは言わないですけど、曽我部恵一を知らない人が聴いても、純粋に『いい曲だな』って思えるものにしたいって気持ちが、最初からあったような気がします。リスナーが聴きたい部分をきっちりと形にしたいというか。だから、『3つの部屋』なんかは、1番から3番までで、違う人に歌ってもらおうかな、なんてことも言ってました。『3つの部屋』の歌詞は、ひとつのストーリーにも感じられますけど、実は3つのストーリーが連なってるって形なんです。だから、その意図をよりわかりやすくするために、そういうアイディアが浮かんできたんだと思います。結局実現はしなかったですけど、『(くるりの)岸田くんに頼んでみよっかな』なんてことも言ってたんですよ。曽我部恵一っていうアーティストは、いろんな側面を持ってますけど、『ラブシティ』は、その集大成みたいな作品になってる気がします。」 吉満同様、ローズレコードのスタッフである岩崎朗太も、『ラブシティ』の制作がスタートした最初期から、その過程を見てきたひとりだ。 「ある日、出勤したら、知らないうちに事務所が<スタジオ・ローズ>になってましたね(笑)。レコーディング自体は深夜にやってたみたいなんですけど、日中に僕がデスクワークをしている後ろで曲を作ってたりっていう状況が続いてたので、曲ができていく過程を背後に感じてたっていう。聞こえてくる曲を聴いてて、『ラブレター』や『ストロベリー』とは違うテイストのアルバム、ロックンロールとは対極にあるっていうか、曽我部のメロウな部分が出ているもの、歌を聴き込むものになるのかなって気はしてました。本人は、『ソロ以降に聴かなくなった人たちに向けて』みたいなことを話してた気がします。ただ、それぞれの曲がどういうアレンジになるのかは、まったく想像がつかなかったですけどね。」 夜のオフィスにひとりでいると、世界が止まってしまったみたいで、素敵な孤独感が。 音符だけがぼくのまわりを衛星のように回っているようです。 (07.Feb.2006/DIARYより) 突然の電話 突然のレコーディング <スタジオ・ローズ>でのデモ作りを進め、自分ひとりでレコーディングを始めていた曽我部だったが、ある日を境に変化が訪れる。 ローズレコードのスタッフである水上由季は、その時の様子をこう振り返る。 「<スタジオ・ローズ>でのレコーディングを突然中断して、それからは、『丁寧に作りたい』『いろんな人とやりたい』って話してたのを覚えてます。あと、『(いろんな人とやりつつも)自由さをどれだけ使えるか』ってことも言ってましたね。」 そして、今回のレコーディングに参加することになるミュージシャンたちのケータイ電話が、いっせいに鳴り始める。着信画面には、「曽我部恵一」の名前。 「いつもそうなんですけどね。突然、電話が来るんですよ。『来週の水曜日にレコーディングするんだけど、空いてる?』みたいな(笑)。今回もそうでしたね。で、なんか空いてるんですよね(笑)。忙しい時は、誰に頼まれても身動き取れないのに、曽我部さんから電話がある時は、不思議とスケジュールが空いてるんです。それで、言われた日時に言われた場所に、ウッドベースとエレキベースを両方とも持っていくっていう。この時点では、どういう曲をやるかは教えられてないから、どっちを使うのかもわかってない。これも、いつものことで、今までどういう曲をやるかを事前に知ってたことは一度もないです。」(伊賀航(※2)/ベース) 「もう、いきなりでしたね。『レコーディングするから来て欲しい。来週の土曜日』みたいな(笑)。」(加藤雄一郎(※3)/サックス) 「電話が来て、『レコーディングをします』って。アルバムのレコーディングだってことは、行くまで知らなかったです(笑)。」(北山ゆうこ(※4)/ドラムス) こうして、『ラブシティ』のレコーディングがリスタートを切ることになる。 レコーディングは、楽曲によって参加メンバーを入れ替えながら進んでいった。 「スタジオに入ってから、初めてその日にやる曲を教えてもらって、構成を覚えたり、コードを拾ったりしながら、通して演奏できるまでまずはやりますね。その間も、曽我部さんは本気で歌を歌ってるんですよ。鼻歌とかではなく、本気で声を出してるんです。で、割といい按配のころ、あんまり煮つまってもいないし、うまく馴染みきってもいないっていうところで、『そろそろ録ってみよっか』ってことになる。最初から感じてたのは、『この人、本気だな』ってことです。いつも本気なんでしょうけど、今回は特に。とにかく、歌で手を抜くことを一切してなかった。歌が歌えなくなると、その曲をやめちゃうんですよ。だから、歌が歌える間にバンドのメンバーは曲全体を把握しなくちゃならない。あんまり歌いすぎると声が枯れてきますからね。ホントに、この瞬間!って感じで録ってるんだなって。今までも、『瞬間と永遠のブルース』とか『7月の宇宙遊泳』とかでそういうところはあったけど、今回はよりいいテイクをとるために本気で歌ってる感じが強くしましたね。」(伊賀) 「私が参加した中では、『どこかでだれかが』を最初にレコーディングしたんですけど、録り終えてから聴いたときに、なんだかワクワクドキドキしてきたのを覚えてます。きっと、すごくいいアルバムが出来そうな予感がしたんだと思います。」(北山) 「僕が参加しているのは、『土曜の夜に』なんですけど、あんまりこうして欲しいとか言わないんですよね。割と自由にやらせてもらってるというか。曲を解説することもなく、『メロウな感じで』とか、そういうやりとりだけです。レコーディングに行った時には、もうすごく気持ちのいいトラックが出来上がってたんで、吹いてるほうも気持ちが良かったですよ。すでに曲の世界があったんで、入っていきやすかったですしね。曽我部さんが呼んでくれる時っていうのは、本人の中でサックスの音が鳴ってるんじゃないかな。無理にとか、なんとなくで入れてみようっていう人ではないですからね。レコーディングの雰囲気は、みんなすごく集中してやってる感じでしたね。和気あいあいって感じでもなく、かといってピリピリしてるわけでもなく。レコーディングは、一発録りっていう感じが強かったですね。曽我部さんって、判断が早いんですよ。もちろん時間をかけるべきところはかけるんですけど、自分の中に響いてる音、いい悪い、ちょっと違うの感覚が、ちゃんとあるんでしょうね。そういう印象を常に受けます。」(加藤) 加藤とともに「土曜の夜に」のホーン・セクションを務めているのが、ライヴでの共演経験はあるが、レコーディングへの参加は初となる、トランペッターの柿沢健司(※5)だ。柿沢は、独特のユーモアを交えながら、レコーディングの様子を振り返る。 「あまりいろんなことを決めないまま、その日のそのテンションで進んでいく感じのレコーディングでしたね。レコーディングの途中で気分を変えるために、曽我部さんが『じゃ、レコードでも聴いてみよっか。このジャズのレコードがいいんだよ』みたいなこともありましたよ。あと、レコーディングをしてる途中に、突然ミックスを始めちゃったりとか。普通のレコーディングって、あんまりそういうことはないんですけど、それが独特の効果を生んでいたというか、停滞する感じもなく、現場の空気の流れを良くしてましたね。曽我部さんには、『キラキラした感じのトランペットを吹いて欲しい』って言われて。『キラキラした感じで』って言われるのって、あんまりないですよね(笑)。でも、トラックがすでにキラキラしてたんで、それに乗っていけばいいかなって思ってたんですけど、よく考えたら、僕自身があんまりキラキラした人間じゃないんで、なかなかキラキラ出来なくて困りましたけど(笑)。曽我部さんは、音楽的には気になってしまうフレーズでも、『こっちのニュアンスのほうがいいんじゃない?』って、ちょっとルーズにというか、ホントに感覚でオッケーテイクを決めていくんですよ。ハモりもちょっと音程が合ってない、ルーズなほうを選んだり。ちゃんとしたものも録音してるんですけどね。それも曽我部さんが全部判断していくっていう。すごく自由なんですよね。自由だからこそ、ああいう僕が歌ったらヒンシュクを買いそうなぐらいストレートな(笑)、(愛の)歌が歌えるのかなって思うんですけどね。」 NEXT> page | 1 | 2 | 3 | ※1.サニーデイ・サービスの5thアルバム。1998年7月15日リリース。 ※2. 1996年、バンド・benzoに加入したころから注目を集め、以後、湯川潮音、つじあやのなど、数多くのライブ、レコーディングに参加。 現在は、細野晴臣、Caravanなどのサポートを務めるほか、 北山ゆうこも参加するバンド・lake、中村ジョー・グループ、関美彦&Easy Piecesのメンバーとしても活動中。 ※3. 「LOVE‐SICK」でのプレイも印象的なサキソフォニスト。 2005年12月には、CALMのレーベル<music conception>から、ソロ・アルバム『Pouring』をリリース。 アルバムには、曽我部もヴォーカルで参加している。 ※4. 伊賀と同じく、lake、中村ジョー・グループ、関美彦&Easy Piecesのメンバー。 その他メインバンドのフォークフラットでの活動、曽我部バンドの上野、大塚のバンド「CARZY PAPA」への参加など 数多くのセッションに参加。 曽我部とはソロ初ライヴとなる赤坂ブリッツのステージに参加して以来の縁。 ※5. 加藤も参加しているNatsumen(現在は活動休止中)、Friscoのメンバー。 http://blog.drecom.jp/kaki987/ (カッキーのダイエット日記) http://friscosound.org/ (Frisco オフィシャルHP) |
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