DREAM MAGAZINE
DREAM MAGAZINE #10  page2/8
『ラブシティ』のすべて

インタビュー/構成:大久保和則
──そういうトライアルがあった上で、最終的には、『ラブシティ』を制作するモードにシフトしていくわけだよね?
「最終的にはね。その間は無我夢中で作ってるから、どういうメカニズムで『ラブシティ』のコンセプトに辿り着いたかは、自分じゃわかんない。でも、頓挫を何回か繰り返しながら、それでもやめずに続けた結果、『ラブシティ』ができたっていうことは確かだよね。途中で、『あぁ、またやり直しだな』って瞬間が何回もあったから。今回は、終わるのを今までにないぐらい引っ張ったしね。自分で、『あ、やめどきはここだな』『やっと来たな』って思ってやめられたけど。その『やっと来たな』をもうちょい我慢して、次の『やっと来たな』まで待ってたら、また別の面白いアルバムになるんだろうしね」
──そうやって頓挫を繰り返しながら、最終的に『ラブシティ』で求めたことを言葉にすると、どうなります?
「“何を求めてたか?”っていうと、やっぱり“聴きやすいポップなアルバム”っていうことなんだよね。サニーデイの時から聴いてきた人もいいって言う。今ライヴに来ている若い子たちもいいって言う。スタッフもいいって言う。自分もいいと思う。みんながいいって言うアルバム。自分以外の全員がいいって言うアルバムを目指すのも簡単だっただろうし、自分だけが最高だなと思うぶっ飛んだアルバムを作るのも、作業工程としては見えるところなんだよね。でも、みんながいいと思うところを目指すっていうのが、すごく難しかった」
──サニーデイ時代にまでさかのぼって、同じような想いで作ったアルバムってあるの?
「『東京』と『MUGEN』。その2枚だけだね。ソロになってからはなかった。今回は、ソロになってからの自分の王道を作るっていう感じがあったのかもしれない。得意分野で、自分のやりたいことで、人をびっくりさせるための音楽じゃなくて、『あ、やっぱりこれだよね』『こういう音楽をやらしたら、曽我部の右に出るやついないよね』って言わせる作品っていうか」
──そういう意味では、自分の資質と真正面から向き合った作品だよね?
「初めての“自分との闘いアルバム”だよね。今回はさ、『お前、実はそういう人間じゃないだろ?』『強がってるけど、そうじゃないんじゃない?』みたいなところを問いただす作業だったから。かっこつけたいところもいっぱいあるんだけど、『そうじゃないじゃん!』みたいなさ。そこで自分と向き合わなくちゃいけなかったから、相当しんどい作業だったけどね。『自分が得意な部分って、本当はここだよね』ってところを、自分でダメ出ししながら、深く探っていくわけだからさ。たとえば、ハウスが好きだから、ハウスの要素を入れてみたいなとか思うじゃん? でも、プロデューサーとしての自分がさ、『そんなハウスの要素なんてどうでもいい。新しいと思われることをやっても無意味』って言うわけよ。じゃあ、自分が本当に欲してるもの、ナチュラルに出てくるものはなんだろうな? っていう問いかけがすごくあって。『等身大の音楽ってなんだろうな?』っていうことが、ここ何年かの自分にとってのテーマなんだよね。等身大の音楽をやる意味とか、そこにおける冒険とか、それこそが旅なんじゃないかとかさ。俺がかっこつけて、瞑想しにインドに行くことは、ホントは旅じゃなくって、子ども連れて幼稚園に行くことが俺にとっての旅なんじゃないのかなとかさ、そういうふうに思いはじめたんだよね。要は、エクスタシー食ってクラブで踊ることよりも、子どもを連れて幼稚園に行くほうがトリップだったっていう結論。その問いただし作業っていうのを、『ラブシティ』では激しくやったんですよ。果たして、絶叫しながら歌うロックンローラーを今はやってるけど、それなの? っていうことも含めて。だから、排除していった曲は、等身大じゃない曲が多いよね。でも、『こういう音楽的な冒険をしてみたい』って気持ちもあるからさ。自分的には意欲作の曲もカットしたから、断腸の想いだよね。何日も、何十時間もかけて作った曲が、ばっさりとカットされていくわけだから、寂しい想いはある。なんとかこのアルバムに入れられないかなと思って、いろんなメイクアップをしていったんだけど、結局はダメだったね。曲が持ってる根本が違ってて」
──ポップなアルバムっていうことを、別の言葉に置き換えるとどうなります?
「自分のお母さんが喜んでくれるような音楽。スライ(※8)みたいな、超バッキバキのファンキーな音楽を作っても、お母さんは喜んでくれないだろうな、みたいなさ。お母さんが聴いて、『あぁ、恵一はこういう子だよね』って言ってくれるような。別にお母さんに送ったりしてないけど(笑)」
──送りましょうよ。
「いやいや。でも、『これ、スライっぽくていいねー』とは絶対に言ってくれないからさ(笑)。そういう曲は、今回は全部外したというか、『ラブシティ』はそういう作品じゃないわけよ。それが『ラブシティ』のアウトライン。俺自身が詰まってるって言えるかなぁ。かっこつけてもいないだろうし。ナチュラルにかっこつけてるだろうし」

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※8.
スライ&ザ・ファミリー・ストーン。スライ・ストーンを中心に、‘67年に結成され、
のちのプリンスなどにも影響を与えた革新的ファンク・バンド。
曽我部は、サニーデイ・サービスのラスト・リリースとなった『Future Kiss』において、
スライの名曲「サムバディズ・ウォッチング・ユー」をカバーしている。
その「サムバディズ〜」収録の『スタンド!』に加え、『暴動』『フレッシュ』は、必聴の名作。

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