DREAM MAGAZINE
DREAM MAGAZINE #11  page2/6
緊急討論会

「みんな失敗するけど、それが人間じゃん」って、俺は思ってる(曽我部)

曽我部 昨日、『SNOOZER』のタナソウさん(田中宗一郎編集長)と喋ってて、「10年前は、よくお客さんを罵倒してたよね」って言われたんだよ。ちょうど今から10年前って、サニーデイ・サービスの『24時』っていうアルバムを出した時期で、精神的にすごく不調っていうか、なんかこうアップダウンがある、自分でも自分をコントロール出来なかった頃でね。ツアーもあったんだけど、ホントにステージに立つことさえしんどい日もあったし、しゃくに触ることを言ったお客さんを指差して罵倒したり、泥酔してステージから落ちたり、バンドのメンバーとライヴ中に喧嘩し始めたり、途中で帰ったことさえもあった。でも、ここ数年の自分は、「ファンに喜ばれたい」「ファンに好かれたい」って思ってたし、自分でレーベルをやっている以上はお金の面でもしっかり回さなきゃいけないから、「絶対にミスは出来ない」「破綻出来ない」って思ってたんだと思う。ソロになって、今のバンドになってから、そういう気持ちをどっかに抱えながらずっと演奏してたんだよね。もちろん、「ファンに好かれたい」「百発百中のライヴをしたい」って思ってやってきたのも自分なんだけど、その上で今思ってるのは、やっぱり歌っていうのは心の揺れなんだから、もっと正直に揺れのまんま歌わなきゃダメなんだってこと。
薮島 でも、いつも落ち着いていて、常に100%のライヴを見せてくれることに越したことはないですよね。
曽我部 それはそうだよね。
薮島 お金を払って観に行く人って、やっぱりある一定水準以上のものを求めて行ってると思うんです。それは、10年前を知っていようがいまいが、その一定水準を満たした上で、「音が悪い!」とか「聴きたかったあの曲をやらなかった……」っていう、個人的な感想が出てくるんだと思う。それは曽我部さんが思う“100%のライヴ”とは、また違うものかもしれないけど。
曽我部 いや、そういうお客さんの気持ちは間違ってないと思う。ただ、ライヴを含めた音楽表現って、野球の試合みたいに何点取ったかで勝負が決まって、それによってチームや選手が評価される、それだけのもんでもないような気はする。自分に正直に歌うことは、ずっと音楽を続けていく俺が、そのモチベーションを保つためにも、最終的に「あぁ、曽我部恵一の音楽は良かったね」って言ってもらうためにも必要なことじゃないかなって。もちろん、「僕は自分に正直に歌ってるから、たまにはこんな感じの時もあるんですよ。だから、今日は我慢してくださいよ」って気持ちは全然ないよ。ライヴ中はお客さんのことを友だちだと思って演奏してるし、そのお客さんが満足しなかった、「金返せ!」と思った、不快に感じた──そういう事実に対しては、「本当にごめん!」って思う。ただ、ここ数年の破綻しない自分だけを続けていったら、自分が何のために歌っているのかわからなくなって、もう終わりだなとは思うんだよね。
青木 私は曽我部さんに対して、「本当に正直な人なんだろうなぁ」っていう印象がありますよ。
曽我部 いや、嘘もつくし、嫌な奴だし、そんなに正直でもないんだけどね。
薮島 さっき、「ライヴ中はお客さんのことを友だちだと思ってる」って言ってましたけど、だとしたら、言える人はライヴ中でも意見を言ってもらって構わないと思ってます? 曽我部さんが寝てたら、「起きろっ!」って言ってもいい?
曽我部 もちろん。ライヴはコール&レスポンスだと思ってるから。
薮島 性格的に直接は言えない人は掲示板に書き込んでもらって、その場で言える人はどうぞ遠慮しないで言ってくれって感じ?
曽我部 うんうん。
青木 確かにファンとの境界線が、曽我部さんにはあまりないように感じます。掲示板での質問に直接答える時もあるし、ライヴ中や物販の時にも感じるし。うまく言えないんですけど、今回のこともその延長線上っていうか……。
曽我部 もしかしたら、実は近しいことなのかもしれないね。とにかく、自分の音楽人生の中で、今回のことをすべてチャラにするようなことがやっていければいいし、やっていくはずだし、一回の失敗なんてどうってことねーって俺は思ってるし、演奏でミスをすることが次の成功に繋がっていくわけだから、そもそも失敗だとも思ってないし。俺が、ライヴそのものに関して言いたいことは、そういうことかな。俺は、ちゃんと自分の体を張って、命をかけて音楽をやってるつもりではある。
薮島 命をかけてやってるけど、それがお客さんが期待しているものではない場合ももちろんある?
曽我部 まぁでも、自分からそうは言いたくないんだけどね。
薮島 本当は、楽しみにしていた以上のものを持って帰って欲しいっていう気持ちがあるわけですよね?
曽我部 うんうん。来てくれることが、まずはうれしいし。
薮島 だけど、それに応えられない時もあるっていう……自分で言い切りたくはないでしょうけど。
曽我部 実際にあるし、あってもいいんだと自分で思えているアーティストでありたいなと思う……なんかすごい難しい表現だけどね。
薮島 うーん。
曽我部 「金返せ!」ってことがあってもいいっていうんじゃなく、期待にそぐわないことがあってもいいっていうか……もしくは、本当はみんなにとってハッピーになるべき出来事が、全部崩れ落ちて大惨事になることがある──そんなミュージシャンでありたいって言ったら変だけど。本当は全部がハッピーに行くべきなんだとは思うのね、もちろん。わざと「今日は外していこう」なんてことは絶対にないし。そこは、わかってほしいかな。全部が真逆に出てしまうことはしょうがない……しょうがない人間ではあるかな。
薮島 初めて曽我部恵一のライヴを観たら、たまたま寝ちゃった、酔っぱらってた、客を罵倒してた、それで二度と曽我部恵一の音楽を聴いてくれなかったとしてもしょうがない?
曽我部 その覚悟はあってやってるよ。もし自分がダメだったら、二度と来てくれなくなっても仕方がないんだっていう気持ちで、その時の自分に正直に100%のライヴをやろうとしてる。その気持ちは、いつでもあるかな。でも、「曽我部恵一の音楽はもう聴かない。ライヴももう観ない」って決めた人に、「ちょっと待って!」とは言いたくないし、「昨日の俺は、本当の俺じゃなくて……」って言い訳もしたくないし。それは、俺の負けなのかもしれないけど、それでいいと思う。
青木 私もそれでいいと思います。それが曽我部さんの本質なんだろうし、私はそこが好きなんだと思う。
曽我部 「みんな失敗するけど、それが人間じゃん」って、俺は思ってるから。だから、「失敗は失敗じゃない」って思ってるんだよね。


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