DREAM MAGAZINE
DREAM MAGAZINE #11  page1/6
緊急討論会

7月11日の金曜日深夜、東京・恵比寿にあるライヴ&バー・スペース=リキッドロフトで、オールナイト・ライヴ「曽我部恵一×七尾旅人〜出会い頭に一晩中〜」が行われました。その際に、出演者である曽我部恵一がライヴ前に飲酒をし、アンコール中ステージ上で寝てしまったという事実は、当サイトの「LIVE DAYS」にも記されている通りです。このライヴ後、当日の曽我部の行為に対する批判を中心とした意見が、当BBSに数多く寄せられました。今回の緊急討論会は、その事実を踏まえた曽我部恵一本人が当BBS上で参加者を募り、7月19日の土曜日に実現したものです。以下は、13時からスタートし、4時間余りに及んだ討論会を可能な限り忠実に編集した原稿です。


参加者
曽我部恵一
青木さん/23歳。女性。兄の影響でサニーデイ・サービス『サニーデイ・サービス』に出会い、以来、曽我部恵一の音楽にどっぷりハマり続ける。ライヴには、ソロになってから足を運ぶように。
薮島さん/男性。曽我部と同世代の音楽好き会社員。
宮本さん/33歳。男性。会社員。曽我部恵一の音楽は、ソロになってから聴くようになり、ライヴにもちょこちょこ通っている。

この会を開いたことで、みんなの心がもうちょっとほどければいい(曽我部)


曽我部 今日は来てくれてありがとうございます。すごく感謝してます。僕がライヴ中に酔っぱらって寝たことへのBBSでの(非難も擁護も含めた)意見に対して、自分で何か答えなきゃなという気持ちはあったんだけど、僕がネット上に自分からの返答だけを書いても、おそらく(すべての人にしっかりとは)伝わらないだろうという気持ちもあって、今回の会を企画しました。こうした会がベストの方法かどうかはわからないけど、一回顔を合わして、(その夜のライヴを)観てる観てないに関係なくお互いが何を思っているのか、僕がしたことに対してどういうふうに思うのかを話そうよっていう場です。いろんな意見があると思うし、意見っていうのは変わっていくものだし、気兼ねせずなんでも言ってください。青木さんは、当日来てました?
青木 いや、私は行ってませんでした。当事者としていなかったから、何もその……。
曽我部 全然いいんだよ。当事者じゃなくても、今のBBSの状況やそこへの書き込みから受けた印象でいいので、自分の意見をぜひ。
青木 最初に苦言が書き込まれた時は、「そういう事実があったんだなぁ」って思ってた感じだったんです。ただ、ここ数日間は、曽我部さんを批判する人、擁護する人、さらに最初の苦言の内容を完全に越すような……行ってない人でも想像でいろんなことを飛躍させて書いてる書き込みが積み重なっていって。それにはほとほと嫌な思いはするんですけど、今回の件に関しては、私は完全に傍観者であって。そこに何か書き込むことも出来たんですけど、なんか……。
曽我部 疲れちゃう?
青木 そうですね。でも、なんで私がここに来たかっていうと、結局は傍観者であっても、「どうなってるのかな?」って思って掲示板を見ちゃうからなんです。別に曽我部さんから謝りの言葉が書き込まれているかどうかを確認したいとかってわけじゃなく、ただなんか見ちゃうんですよね。すごく不愉快な書き込みもあるし、でもそういう内容じゃない書き込みもあるから、なおさら見ちゃって。ただ、自分はなんにも書き込むことが出来ないし……。
曽我部 どうしたらいいのかわかんない?
青木 そう。どうしたらいいのかわからない。当事者でもないし。でも、せっかく曽我部さんがこういう話し合いの場を作ってくれたんだし、こんなふうに気持ちがウニャウニャするんだったら、直接その場に行ってこのウニャウニャした気持ちを解消したいなって。
曽我部 それがひとつの目的だよね。読んでるみんな、書き込んでるみんなと俺自身の心が、(この会を開いたことによって)もうちょっとほどければいいなって思う。ネット上の書き込みって、むき出しの感情みたいに感じることも多い。でも、“心”っていうのは、“むき出しの感情を包んで、誰かと接することが出来るようになった状態のこと”だと思うのね。だから、(心がない書き込みは)読んでてしんどいよね。そういう面がネット上のコミュニケーションの一番難しいところだと思うけど、そこは越えていかなきゃいけないなという気持ちがある。越えていくっていうのは、それに耐えていく方法を覚えるってことじゃなくて、ネットの中でもっと心があるコミュニケーションをする術を自分たちで身につけるべきだと思うってことなんだけど。

インターネットは便利だけど、言葉と言葉の間の表情が見えない(薮島)

薮島 僕も当日は行ってないんですけど、あの日のリキッドロフトには、もちろん曽我部さんのライヴに何度も行ったことがある人もいたと思うんです。でも、「あの日、あの場所、あの時間だから行けた」っていう人も、おそらくいたわけですよね?
曽我部 うん。
薮島 そういう人たちからしてみれば、期待していたような歌が聴けなかったら、やっぱりがっかりすると思うんですよね。
曽我部 せっかく来てくれたのに不快な思いをした人がいるのは事実で、それは本当に申し訳ないと思う。ただ、これは自分のすべての音楽活動に関して言えることなんだけど、弁明したり釈明したり謝罪したりはしたくないんだよね。なんでかって言うと、間違っている部分も含めた“曽我部恵一”を伝えることが、ミュージシャンとしての自分が守るべき部分なのかなって思ってるし、やっぱりすべてが自分自身だから。今回のリキッドロフトの件に関しても、「これからは、みんなが納得するような人間として過ごすつもりです」「明日からすべてを改めて完璧な人間になります」とは絶対に言えないし、言いたくもない。だから、「謝罪せよ!」っていう意見に対しては、俺は「NO」って言う。もちろん、本来の音楽家っていうのは、演奏することによって誰かをいやしたり、喜ばせたりする存在だとは思う。自分もそういうふうになりたいし、逆に自分が行動することで誰かが怒ったりするのは嫌だし、期待してたライヴが、「なんだこれ!?」って感じだった時のがっかりした気持ちったらないってこともわかる。それを味あわせたんだから、何度も言うけど本当に申し訳ないって思う。でも、それをリカバーできるのは、(謝罪をすること云々ではなく、これからの)自分(の音楽)しかないのかなって思うんだよね。
薮島 その場にいて不快感を覚えた人がいるという事実を、曽我部さんがちゃんと受け止めてるんであれば、それはそれでいいんじゃないかとは思うんです。ただ、その日のライヴに行ってない人がいろいろと乗っかっちゃってるのが……。
曽我部 でも、掲示板って、むき出しの感情の交差・錯綜という面も強いと思うから、今回みたいなことは起こり得るだろうなって思う。
薮島 インターネットって便利だけど、言葉と言葉、行と行の間にあるその人の表情は、実際には見えないわけじゃないですか。インターネットはそういうものだよって、生身のコミュニケーションとは別物としてしっかり捉えられるかどうかっていうのは大事だと、僕は思います。


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