News
サニーデイ・サービス『いいね!』アナログ盤を購入してくださった皆様、これから購入を検討している皆様へのご案内
サニーデイ ・サービス『いいね!』アナログ盤について、「特定の箇所が針飛びする」というご指摘をいくつか頂戴しました。
この現象について、考えうる可能性の中でご説明いたします。
前提としまして、このレコードはプレス工場の厳密な基準をクリアしたもので、工場において一般的なレコードプレイヤーと比較的安価なプレイヤーの2種で検品し、針飛びも含む問題が無いことが確認された上で出荷されているということをご了承ください。
まず、今回のアナログ盤制作にあたり「音を大きくカッティングする」ということは自分の命題でありました。そのために、何度かアナログ盤用のマスタリング→カッティングを繰り返し、納得のいくマスターを作り上げました。
それで出来上がったのが、クリアブルーのファーストプレス盤です。仕上がりには完全に満足しています。
そして、この「音を大きくカッティングしようとした」ことに、針飛びを誘発させる要因があったと思われます。
大きな音、または小さい音から大きい音への急激なレンジの変化は、レコードの溝の大きな振幅を要します。このことは、針に大きなインパクトを与えます。
レコードを載せるターンテーブルの部分が小さく(7インチサイズ)、アーム部分も短いコンパクトなレコードプレイヤーの場合、その音量の振幅に針が耐えられず針飛びを起こしてしまうということが、稀にですが、あります。
これは、プレイヤーのレコードを乗せる部分が小さいため、レコードの外側は宙に浮いている状態になり、フラッター(走行性のむら。この場合、上下への波打ち)を生じるからです。
そしてもう一点、レコードの溝の深さの問題があります。
その話に移る前に、レコードの外周・内周のお話をさせてください。レコード盤は外側の方が情報量をたくさん入れることができます。逆に内側に行けば行くほど、情報のための容量は乏しくなっていきます。つまり、レコードは外周が音が良く、内周に行けば行くほど音が劣化するメディアです(アナログ時代のLPで、A面B面の1曲目に推し曲が入っていたり、各面の最終曲が静かな曲だったりすることが多いのはこのためです)。
ですので、カッティングの際には外周面積が優先して使われます(12インチなどで、外周のほんの少しの面積にしか音が入っていないものがありますが、それは効果的なことなのです)。
溝の話に戻ります。溝幅を大きくカッティングすれば、レコードの針が深くまで沈みますので、安定します。ですが、溝幅を大きくとると言うことは、内周まで面積を使うことになってしまいますので、後半の曲は音の鮮明さが減ってしまいます。そういう理由で、今回のカッティングでも、「なるべく溝は狭く、外周寄りに音を入れる」ようにカッティングしています。この点も、特定のプレイヤーにおいて、針飛びを誘発する要因になっていると思われます。
以上のことが、このレコードが一部のプレイヤーで針飛びを起こしてしまう要因と考えられます。
加えて、針の摩耗、針圧の不備など、プレイヤー自体の問題点も大きく関わってくると思います。
繰り返しますが、このレコードに傷があったり、プレスミスがあるということではありません。また、ご指摘くださったお客様がお使いのものと同じプレイヤーを使って再生したところ針飛びが確認できなかったこともあり、特定のプレイヤーで再生すると必ず針飛びするというものでもありません。正確に調整された針とカートリッジとアームを持つプレイヤーでこのレコードをかけて針飛びをするということは、絶対にありません。
この対処としまして、音量を落としカッティングした再プレス盤を作るべきか、かなり迷いました。
しかし、自分としましてはこの音量・音質が気に入っていますし、良品であるという確信があることから、再プレス分からも同じものを作ることにしました。
大変長くなりましたが、『いいね!』に針飛びが起きる要因と、『いいね!』のアナログ盤の品質、そして今後の対処についてのご説明をさせていただきました。
最後になりますが、アナログレコードは素晴らしいものである反面、とてもデリケートで、少しの傷やホコリはもちろん、針圧の不備などによっても針が飛んでしまうことがあるとてもデリケートなメディアです。
現在は、たいへん安価なレコードプレイヤーも多く市場に出回っていますが、針圧の調整などもできない機器も多く、再生装置のクオリティの幅が広すぎる状況となっております。
ぜひ、「アナログメディアを再生する」というデリケートさをどうかご理解いただき、お楽しみいただければと切に願います。
曽我部恵一