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今どきの若者・牧田 純くんは、どうも今どきの若者になりきれずに困っていた。 「なんとか自分を表現するすべはないかしら???」 不穏なバイトの日々をのっぺりと過ごしながら、いつもそのようなことを感じていた。 そう、あなたやわたしのように。 しかし、そんなものは大昔に奪われてしまった人間の自由であって、渋谷の道ばたに転がっているわけはないのである。 彼はそのことに気付かなかった。 「なんとか自分を表現するすべはないかしら???」 きょろきょろと歩きながら、いつしか彼は絵を描きはじめる。 道ばたで見つけたもの(たいていがどうでもいいもの)を紙に写しはじめる。 彼の自由帳に、そんなものたちが溜まっていく。 |
それは表現というより、ただの記録であり、つまりは極個人的日記である。 物語りは普通、このへんで終わる。 しかし彼はそのことに気付かなかった。 「なんとか自分を表現するすべはないかしら???」 彼は続けてみた。のっぺりとした日々のなか、コピペされた無数の花びらの散る季節のなか、続けることをやってみた。 ふてくされながら、笑いながら、わめきちらしながら、愛しながら。 いつしか彼は、彼が続けるうちは続く物語りを手にしていた。 わたしは純くんと純くんの絵が大好きだ。もっと言うと純くんの部屋も純くんの彼女も大好きだ。自由を感じさせるから好きだ。 いちばん好きな画家なのである。 (曽我部恵一) |
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